読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

【#64】聞く力ー心を開く35のヒント 阿川佐和子

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

 

 

◎本書の内容と感想

タイトルがタイトルだけに、ノウハウ本と思っていましたが、ノウハウ本というよりも阿川さんがインタビューという仕事を通じての出来事や感じたことを書いた本というような感じです。

失敗もあったし、恥ずかしい事もあった、でも嬉しい事もあったヨ!ちょっと読んでかない?と本の帯の写真の阿川さんが語りかけてきそうな印象を受けました。だって、帯に阿川さんの写真の横に「そうか、まだ君は読んでいないのか」って書いてあるからw

本書の構成は、3章に分かれています。1章が「聞き上手とは」。2章が「聞く醍醐味」。3章は「話しやすい聞き方」。

1章から順に説明しますと、1章ではインタビューってコミュニケーションの一つだよねというようなお話。2章は阿川さんが実際にインタビューした人達のエピソードを交えながら何を感じながらインタビューをしたか?などインタビュー時の心境を一つ一つ振り返る感じ。3章は、2章と同じくインタビューした人たちのエピソードを交えながらそこから得た発見やそのインタビューを分析するお話。

2章と3章が同じスタイルなので、最後の方は飽きてしまい読み飛ばしてしまいました。仕事柄インタビューする機会がある人は、何度か読む必要がある一冊です。

◎この本のメッセージ

インタビューはコミュニケーションの一つ。インタビューってそんな特別なものじゃないよ。でもコミュニケーションって難しいなあ。おそらく、本書のメッセージはこれだと思います。第一章(Ⅰ)に「聞き上手とは」という項目があるのですが、個人的にはここが一番面白い部分でした。

◎読書メモ

1.面白そうに話を聞く事はできる

聞き上手とは必ずしもデーブ・スペクターさんのようにビシバシ切り込んでいくことだけではないかもしれない。相手がこの人に語りたいと思うような聞き手になればいいのではないか。

こんなに嬉しそうに聞いてくれるならもっと話しちゃおっかな。あの話もしちゃおっかな。そういう聞き手になろう。

インタビュアーは、聞き手だからこそズバっとした質問をしなければいけないと僕も思っていましたが、阿川さんのこの文を見て「そうだよなあ」と思いました。

聞き手は「質問をする」という事だけが役割ではありません。うなずきや雰囲気や阿川さんの言っている、嬉しそうに聞くということも聞き手の役割で、それらは自分にあった聞き方にしていけばいいのです。

何も「すごい質問」をする事がインタビュアーや聞き手において一番大事なことではなく、自分にとっての「聞く」スタイルを確立すればいいのだと。

 

2.メールの会話と実際の会話は違う

世の中便利になったもんです。他人とのコミュニケーションのために頭を使わなければならない場面が減っているのです。聞くところによると、オフィスで隣の席に座っている人ともメールでやりとりをするんですって?

おまえらそんなに声を出すのが億劫なんかい!失礼しました。つい感情的になってしまいました。でも、私思うのですが、メールの会話と実際の会話は違うと思うのです。

「今度の企画書の提出が、かなり遅れ気味なので、早急にとりまとめて部長のところへ提出してください。私はもう一つの案件があるので忙しい。あしからず」

なにを偉そうに。遅れ気味になったのはアンタがぐずぐずして決めなかったからじゃないの。早急にってその言い方なんなのよ。あしからずって申し訳そうな態度全然伝わってこないもんね

メールを受け取った側はかすかにかちんとくるでしょう。メールでは、表情や動作が分かりません。画面の文字だけでは伝える事が難しいです。

企業の方にメールを出す時によく「お世話になります」や「お世話になっております」という言葉を使います。僕はインターンをしていた時に機械的に使っていましたが、よくよく考えてみれば、これらはちゃーんと意味があるんですもんね。

メールという手段は、表情や動作はもちろん、声すらも分からないわけです。特に企業の方にメールを送るのであれば、お互いの事をよく知らない場合が多々あります。

そう考えると、自分から送るメールは丁寧すぎるのは丁度いいのかもしれません。

3.聞き手が相手の話を面白くないと決めつけるのはよくない

私はその時に肝に銘じました。自分で決めつけてはいけない。こっちの話が面白いに違いない。あっちの話はそんなに面白くないだろう。聞き手が決めつける事がどんなに危険であるかを、あの日、思い知りました。
 
4.人は皆、自分と同じ顔で喜んだり寂しがったりしない
「だって非常に話しやすいんだもん」

その言葉を聞いて私もシバグチ女史も担当編集者も、いっせいに、イスから転げ落ちました。どこが話しやすかったんだ?私のみならず、その場にいた全員が最後まで、どうにもこうにも盛り上がらなかったとそう思っていたからです。

人は皆自分と同じ顔で、喜んだり悲しんだり、寂しがったりするとは限らない。私が「楽しくなさそう」に見える人だって、心の中で飛び上がるほど楽しいと思っているかもしれない。だから勝手に決めつけるのはよそうと。

 

 5.外せない質問は「お決まりの答え」にしない

「なぜ結婚をされないんですか?」

この質問、私は何度もされました。このように誰もが聞きたくなる疑問はあります。そしてお決まりの質問があるのと同時にお決まりの答えがあるのも事実です。

なぜならその質問は重要であり、外せない質問なわけだから。そこでいつもスタッフと一緒に考えます。「外せない質問」である。だから今回も聞かなければならない。

でもどうせ聞くならお決まりの答えにしたくない。これには、残念ながら答えはありません。
 
6.待てないのはこっちの都合
阿川「何が欲しいの?」
阿川祖父「あー・・・・・」
阿川「お醤油?お醤油はあんまりかけない方がいいって。お医者様に言われたでしょ?」
阿川祖父「でも明日は、、、、」
阿川「何?明日のこと?明日の事は今決めなくていいの」

高齢者の話を聞いてると最後まで我慢できず、つい先回りしたくなる事があります。でも待っていられないのはこちらの一方的な都合であり、高齢者は自分の言い分を無視され、おおいに傷ついているでしょう。