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【#15】なぜ落合博満は名将なのか?《コーチングー言葉と信念の魔術 落合博満》

コーチング―言葉と信念の魔術

コーチング―言葉と信念の魔術

 

内容

野球好きなら誰もが知っている名打者、落合博満によるコーチングの本。落合自身が初めて受けたコーチングの経験や自分が教えた経験をもとに、人を育て、伸ばすための心得やコツを説いている。

落合というと、とかく個人主義的なイメージばかりが強調されがちだが、実は現役時代の落合は、投手がピンチに陥ればすかさずアドバイスをしにマウンドに駆け寄ったり、同じチームの打者がスランプに陥っていれば相談に乗ったりと、コーチあるいは兄貴分としても重要な働きをしていた。結果、「落合効果」という言葉が生まれたほどだ。

本書では、その落合の名コーチとしての側面を垣間見ることができる。あくまで個を伸ばすことに主眼を置き、裏方に徹する姿勢や、短所を指摘するのではなく長所を伸ばすことに注力する方針、手取り足取りのやり方を否定し、選手の自助努力を促す姿勢などにマネジャー が学ぶことは多いだろう。また、個人が組織の中でいかにして付加価値を高め、能力を発揮していくべきかという点にも言及している。チームを何度も優勝に導 き、自らも2年連続三冠王をはじめとする偉業を成し遂げた落合だけに、その言葉には説得力がある。

成果主義、雇用流動化の時代には、これまでのようなトップダウン式の教育・指導方法は通用しない。本書は、現在注目を集めるコーチングの基本を説いた本として、また上司と部下双方の視点を示した本として、意義のある1冊である。(土井英司)

感想

中日ドラゴンズ監督の落合博満さんの著書『コーチング』2011年に出版された『采配』という書籍に似たような印象を受けた

基本的に、落合さんの名言が一つ書かれており、それに対するエピソードがつらつらと綴られている
※『采配』も上記のような構成となっている

主に指導者から見た目線というものに関して書かれている。例えば部下の接し方であったり、部下のモチベーションをあげる方法であったり...本書ではこのようなことが書かれている。

1.ただの真似ではなく、盗め!

私がスイングを見た一人の内に多村仁という入団7年目の人物がいた。多村は昨年まで助っ人として活躍していた。ロバートローズという人物の打撃フォームそっくりな構え方をしていた。多村がなぜそうしたか分からない。(中略)

 

模倣から入ってもそこで何かをつかめばいい。だから多村にも「そういう打ち方はだめだから、こうしろ!」とは一切言わなかった。ただただバットをふらせた。振らせる量は半端じゃない。2時間の間に1000~1500ものの数を振らせた。(中略)

 

するとどうだろう。数時間後には、ロバートローズのフォームはなくなり多村自身だけのオリジナルなフォームができていたのである。なぜそうなったのか。それは、ロバートローズのフォームは体格が大きい人に合っているフォームだからである。体格がそこまで大きい多村には疲れてしまう。つまりフォームが自分に合っていないのだ。そして数千もののバットをふっていると楽をしようと自分で考えるようになる。


上記のエピソードは盗むことの大事さも書かれていると思うが、もう一つ大事なことが書かれている。それは、自分の力を最大限に発揮するには『自然体』であることが絶対条件ということである。多村選手は、ローズという優れた選手の真似をすることでいい成績がとれると思っていた

でもそれは同時に自身の個性を潰すことでもあり、自分の自然体も破壊してしまったのである。これは中学生や高校生の人達にも共通して言えるだろう。クラスで一番成績のいい人の勉強方法をただ真似しただけでは成績はあがらない。その人のやり方の一部分を盗み、なおかつ自分が自然体でいられる勉強方法こそが自分の成績を上げる唯一の術であるのだ

とまあそのような野球に関係ないことも書かれているので、野球に興味がない方がたにも読んでいただきたい一冊である。特に、先生とか、会社員で部下を持つ人達、読んでくださいな...

本書に書かれているエピソードは、落合さんが現役時代の時のことだけでなく、横浜ベイスターズで臨時コーチとして3日間務めたことに関しても書かれている

この本を読めば、落合博満という存在がどれだけ偉大であるか、またメディアを通じて報道される落合さんの姿が真実ではないかが分かるであろう


◎読書メモ

2.コーチは教えるものではない。見ているだけでいいのだ

その選手にはその選手のいいところがある。だから指導者は、その選手の何がよくて何が悪いかを頭に入れておけばいいのである。だが、そのためには、何が悪くて何がいいかを分析する力が必要である。見ているだけでいいと書いたが、ただ選手を眺めているだけで答えはでないのだ

 

3.コーチの仕事は選手が気持ちよくプレーできる環境を作る事

一軍は戦う集団であるから、投手コーチ、打撃コーチ、守備コーチ、走塁コーチ。あとは、ノッカーや裏方など練習を手伝ってくれる人がいればいい。一軍のコーチの仕事は、選手がいかに気持ちよくプレーできるような環境を作るか?である。

 

しかし、ファームのコーチは優秀なコーチを置きたい。なぜなら、ファームという場所は選手を教えて育てねばならない場所であるからだ

 

4.監督は虚勢を張るのも一つの仕事

組織の上に立つものは、マイナスの部分を他人に打ち明けたりしてはならない。監督がAクラス(1位~3位)に入ればいいと公言している監督は指導者失格である。Aクラスに入る!は組織を停滞させるだけであって活性化はない

 

一方、選手が活躍した時に「あんな投手はプロでは通じませんよ。なんぼでも打てますよ」と言えば、必死で向こうも練習してくるので、打てなくなる可能性もある。でも、「打てたのはまぐれですよ。100回に一回あればいいですよ」と言って、打たれた選手の気を悪くしないようにすれば、打てる可能性が増える

 

5.自分のハードルを上げさせる

指導する時に大事なことは、コミュニケーションの主体が選手であること。間違っても、指導者が主体となってはいけない。だから、選手が納得してないのにもかかわらず、指導を進めてはいけないのだ。私は横浜で臨時コーチをした時で、練習終わりに以下のようなやり方でやった

 

「おまえが納得したスイングを10本して終わろう」すると選手は「一本」「二本」とふるうちに私の顔を見る。自分がいいスイングをしていると思っても不安なのだ。例えるならば、学校で「はい」と手を挙げて答えた後に「これでいいのかな?」と先生の顔を見て「はい、いいですよ」と言われ、安心して座った体験と一緒である

 

だから私は、「おまえが一本と思うならそれでいい」と言った。これは心理学的な要素もあると思うが、自分が決めるとなるとハードルがあがる。なぜなら、「せっかく落合さんに、教えて貰ったのに、こんな一本ではだめだ」と思うからである。

 

6.欠点を再認識させない

欠点が目立つ選手に対してはどうやって接すればいいのであろう?最もいけないのは、その本人にそれが欠点だと認識させるような言動をすることである。欠点とは本人がどこかで気にしていることなのだ。だから他の社員と比較して「君は彼よりここが劣っている、何とかして力をつけよう」という言い方もタブーである。まずは長所を伸ばしてみて、それでも欠点が目立つのであれば本人と話し合ってみる

采配

采配