読書めも

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弱者だから正義、ンなわけあるか!《名刺ゲーム 鈴木おさむ》

名刺ゲーム

名刺ゲーム

 

いま人気のテレビ番組「クイズ!ミステリースパイ」のプロデューサーの神田達也が家に帰り、リビングのとびらを開けると、そこにいるはずのない高校生の息子(和也)がリビングの壁に磔(はりつけ)にされている。しかも、首には爆弾のようなものが取り付けられている。その近くにいた玉虫色のスカーフをした見知らぬ男がこう言った。「和也くんの命を助けたくば、ゲームをしよう」と。

そして、5人の男女をリビングに招き入れ、達也に6枚の名刺を手渡し、玉虫色のスカーフの男はこう続けた。「これは、あなたが目の前にいる5人の人たちからもらった名刺です。いまから、あなたはこの名刺を持ち主のもとに返してください。一度でも間違えれば、和也くんは死にます。それでは名刺ゲームスタート!」

しかし、達也はこれらの名刺をもらった覚えがまったくない。5人の顔も記憶にない。だが、名刺ゲームが進むにつれ、かれらが自分にとってどんな人物であるかわかってくる。はたして、達也は息子を助けることができるのかーー。

 

まあ、あらすじはこんな感じ。

お笑い芸人の森三中の大島さんの旦那である鈴木おさむさんが書いた「名刺ゲーム」、読みおえました。

とにかく登場人物の心理描写が上手に描かれている。その心理描写をしばしばたとえ話で表現しているのだけど、そのたとえ話がすごく上手で、登場人物ひとりひとりに感情移入するほどのものだ。

僕をクビにしながら、ネタだけパクった。神田達也は僕のことをクビにしたあと、僕のクイズ案を自分のアイデアとして発表した。人を殺しておいて、さらに内臓を盗んで医者に売りさばくような真似をされた

これは、名刺ゲームの参加者であり、クイズ番組の脚本家で神田達也の手によってクビにされたひとの心理描写なんだけど、こういう表現が文中にたくさん出てくる。そして、登場人物それぞれに感情移入するから、ページをめくるスピードも自然と上がっていく。

物語を読み進めていくとわかるんだけど、達也(プロデューサー)と5人の関係が徐々にあきらかになっていく。物事を独善的に進める達也とそのことにより虐げられてきた5人。

こうやって書くと、「なんだ達也が悪いんじゃねーか!」っておもうかもしれないけど、達也には達也の思いがあり、5人が正義で達也が悪という単純な二項対立にしていない。二項対立にしていない理由について、鈴木さんが日刊SPAで答えていたので興味があるひとはそちらを参考に。

本書は、テレビ業界の闇を描いた小説らしいから、どこまでがホントで、どこまでがウソなのかきになるところ。というか、鈴木さん自身が体験したこともいくつか書いてるんじゃないかなあ。