読書めも

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【書評】島田紳助の引退騒動の裏にはなにがあったのか《笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長 大崎洋物語》

笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語

笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語

 

感想

 まえがきで笑いを誘っているところがさすが吉本の社長だなぁと思った。

この本はそんなオレの吉本人生を元「噂の真相」の常松っちゃんが書いてくれた。別に頼んでへんけど。

 

感謝 。

 

 日本のエンタメ、そしてお笑いがどのように変遷してきたかがわかる一冊だった。島田紳助さんの戦友であり、ダウンタウンのマネージャー(非公式の)であった大崎洋さんの物語。彼らと共に歩んできた大崎さんだからこそ知っているエピソードが本書にたくさん詰まっている。

 たとえば、松本人志さんのベストセラーとなった「遺書」が生まれたのも大崎さんが松本さんの背中押したからだ。

「なあ松本、おまえ本でも書けや」

「なに言ってますのん」

「そんなん無理に決まってます」

「本書いたり、映画撮ったり、いろんなことやったらええんとちゃうかと思ってな」

「どうしてそんなこというんですか」

 

松本にしてみれば、いよいよ「お笑い」の世界で全速力を始めたばかりだというのに、「なんで余計なことまでやらなあかんのか」というところだろう。(中略)

 

無理強いするつもりもなかったが、その後もなぜかお正月になるたびに思い出し、ずっと耳元で「本書けや」と囁き続けていた。それがこの年になって松本のほうから「ちょっと書いてもええと思ってるんですけど」と言ってきたのだ。 

 そのほかにも、2011年に引退を発表した紳助さんのあの出来事についてもエピローグで触れている。

「なあ紳ちゃん。一種間前、会社にこんな資料が持ち込まれたんや。こっちでもいろいろ調べたんやけど、どうやら資料は真正や。心当たりは、あるよな... ...」黙って資料に目を通していた紳助が答える。

 

「確かにこれは僕のメールです」(中略)

 

「... ...でもなあ、それでもやっぱり、こういう付き合いはアウトなんや。警察の調書に書かれてるってことの意味は大きい。会社としてもこのままなにもせんわけにはいかんやろし」静まり返る会議室。沈黙を破ったのは顧問弁護士だった。

 

「どうしますか?」一呼吸置いて、紳助が顔を上げる。

 

「じゃあ、引退します」淡々と口にした。

 

「... ... そうか」時間にしてほんの十分ちょっと。苦い時間だった。紳助はこの短い時間で、三十数年間かけて自分の居場所を積み上げてきた芸能界から離れる決断をしたのだ。

 

「... ....やめたら普通にオモテ歩けるかなあ」帰りしなに紳助がふとつぶやく。

 

 こうして、紳助さんは引退するのだが、この話には後日談がある。大崎さんは、紳助さんが引退してからもメールや電話で連絡をとっている。さらには、紳助さんの自宅に赴いている。なにか特別な話があったわけではなく、友人として会いにいったのだ。そのときの話はぜひ本書で確認していただきたい。島田紳助ファンにとっては、なんともいえない気持ちになるだろう。

自分メモ

NSCは、笑いを教えてもらうところではなく、相方を見つけ、いま自分がどの立ち位置にいるかを知り、これからどうやっていくかを考えるための場所。

 

・いままで読んだなかでいちばん泥くさい経営物語。

 

・失敗体験談が多かった。