読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

【#85】勝ち続ける意志力 梅原大吾

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

 

 ◎内容と感想

「この本、欲しい」とひさしぶりに思えた一冊でした(図書館でこの本を借りて読んだから)。それくらい大事なことがたくさん書かれています。この本は日本で初めてプロ契約をした"世界で最も稼いでいるプロゲーマー"の梅原大吾さんの著書です。

そもそも、プロゲーマーとはどのような職業なのでしょうか?

基本的に、スポンサーと契約をして、大会などに出場して賞金を得たり、ゲーム開発のアドバイザー的なことをしたり。

日本でプロゲーマーと呼ばれる人は、3人です(2011年時点で)。日本でプロゲーマーが育たない理由の一つに、ゲームがまだ子供の遊びと捉えられていることがあげられます。

そんなプロゲーマーの梅原さんがゲームを通じて学んだことがぎっしりと書かれています。僕が読んでて、すごくいいなと思ったのは第一章のタイトルです。

「そして、世界一になった」

これが第一章のタイトルなんです。"どうやって世界一になったん!?"と思わず、ききたくなるようなタイトルがすごく好きです。

それからもうひとつ。本のソデ(表紙の裏側。著者のプロフィールとかがよく書かれている)に書かれた文章が、この本を読むのにワクワクさせてくれました。

17歳にして世界一になった。2010年8月、「最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス・ワールドレコードに認定された。職業、プロ格闘ゲーマー。

これから僕は、「世界一になって」、そして「世界一であり続けることによってしか見えなかったこと」について話をしたいと思う。それは「勝つために必要なことは何か?」「なぜ多くの人は勝ち続けることができないか?」という話だ。いわば「世界一になり、世界一であり続けるための仕事術」とも言えるかと思う。その技術は、ゲームの世界ではもちろんのこと、それ以外の世界でも必ずや、前進のためのお役に立てるだろう。

世界一を経験してなにを得たのだろう?どんな話が書かれているのだろう?と思わせる文章です。

 

◎疑問

・どのような経緯で本の出版の話がきたのか?

・本のタイトルの他の候補はどんなのがあったのか?

→本のタイトル・各章ごとのタイトルからなにかを感じます。プロで妥協を許さない梅原さんだからこそ、本のタイトルや各章のタイトルにこだわりがあったはず。

 

◎読書メモ

1.勝負がなくても生きていける

介護は一般的な仕事と違って、ノルマを課せられるわけでもスピードを要求されるわけでもない。もちろん、人の命を扱う仕事なので、ミスは許されないが、人と競争して、とことん利益を追求するような仕事ではない。優しい人たちが働いている場所。追求する人生に疲れた僕は、そんなイメージを抱いて介護の仕事を始めた。 

 

そうやって仕事を始めると、毎日が勉強で、身体にも披露が残る。人生について深く考えている余裕もなく、一日が瞬く間に過ぎていった。そんな毎日を繰り返すことで、僕の心は徐々に回復していった。

 これは、梅原さんがゲームの第一線から退き、麻雀のプロをめざし、その夢もあきらめたときのシーン。常に"勝負"する世界に身を投じていた梅原さんが、全くちがう世界に触れたときの感想。

ゲーム・麻雀の世界と介護のちがいが書かれていてすごくおもしろい。

 

2.自分を痛めつける努力はしてはいけない

若いころの僕は本当の意味を知らず、間違った努力に手を染めることも多かった。ある大会で4連覇が懸かった大会。僕はかつてない異様なプレッシャーに包まれた。それまではプレッシャーを感じたことなどほとんどなかったのだが、大会が近づくにつれて重圧が高まり、胃の調子がおかしくなった。そんな状態なので当然、勝率も思うように伸びなかった。そこで、勘違いをした。

 

「俺の努力が足りないからだ。もっと自分を追い込まなきゃ」 そう思ってしまった。壁を乗り越えるため、そこからめちゃくちゃ自分を追い込んだ。一日の大半をゲームに費やし、うどんしか食べられない状態になった。それなら食事もいらないと、何日かは食べることを放棄した。精神状態がどんどん悪化して、誰も話しかけれないような状態になった。

 

そんな状態でベスト8まで残ったこと自体、執念の一言につきると思うが、当時の僕は負けた絶望感と大会が終わった虚脱感で、ほとんど放心状態だった。悔しさではなく、意識が朦朧とするくらいのショックに自我が失われそうだった。それから半年間ゲームから離れた。

 

いま振り返ると、あのとき勝てなくて本当に良かったと思う。あんな頑張り方をして結果を残していたら、いまも間違った努力を続けていたような気がする。いや、遅かれ早かれ痛い目にあって、その時こそ本当にゲームをやめていたかもしれない。自分の限界を超えた期間限定のがんばりというのは、結局は背伸びに過ぎない。食事も満足に取らず、睡眠時間を削るような取り組み方が長続きするはずがない。

 

これまでの経験から言えることは、自分を痛めつけることと、努力することは全然違う、ということだ。それに気づいたのが前述の4連覇を逃した大会だった。当時の僕は、苦しいことを我慢することのみが真の努力だと思っていた。ガムシャラに時間を割いたり、数をこなしたりするのは、自分を痛めつけているだけだと気づけなかった。

 

それに、間違った努力は強迫観念をも生んでしまう。「こんなに頑張っているんだから結果がでるはずだ。これだけやって結果が出ないのは世の中がおかしいからだ。」そんな歪んだ思考になってしまう。努力には人それぞれ、適度な量や限度が決まっていると思う。

 努力とはなんぞや?ということを梅原さん自身の体験を元に書かれたシーンです。自分にひたすらムチを打つことが努力ではなく、正しい努力をしましょうよと。そんなことを語りかけてくれているような気がします。

 

3.僕の全盛期は「いま」。いまが間違いなく一番強い

「梅原さんの全盛期はいつですか?」10代の頃からゲームを続けてきたせいか、そんな質問をされることがある。僕は、決まってこう答える。「いまですよ。いまが間違いなく一番強い」いまが一番でないなら、プロを名乗るべきではないと思う。今日よりも明日が良くなければ、何のために努力しているのか分からない。継続的な成長を目指さないのであれば、競技から退いた方がいい。

 

喜劇王であるチャールズ・チャップリンは、あるインタビューで「あなたはいままでたくさんの劇でを作ってこられましたが、自分のいままでのなかで最高傑作はどれか、と訊かれたらなんて答えますか?」という質問に対して「Next One(次回作だよ)」と答えたという有名なエピソードがある。

 

少なくとも僕は、いまが一番だという確信があるからゲームを続けている。そして僕は、いまも昔も自分が一番強いと思っている。それは常に最前線で結果を出し続けてきた自負と、その自分すら超え続ける自信があるからだ。 

 

 4.勝った翌日ほど対戦する

人は、過去の栄光にすがると弱くなる。僕は、大会で優勝した翌日ほどゲームセンターに行くようにしている。あえて行くように心がけている。大会で勝つとひとつの欲求が満たされるので、ある種の満足感を得てしまう。そして「しばらく対戦しなくていいや」と腑抜けてしまう。

 

しかし、満足すると成長は止まる。だからそんな自戒もこめて、チャンピオンになったときほど、閉店までゲームセンターで対戦を繰り返すことが多い。すると、勝ったり負けたりする。そして、自分に言い聞かせる。

 

「ほら。チャンピオンと言ったって、勝ったり負けたりなんだから」 

 AKB48が設立当初掲げた夢がある。それは、東京ドームでライブをすること。でも、その夢には続きがある。東京ドームでライブをした翌日にまた劇場で公演をすること。このAKB48の話にすごく似ているような気がする。

自分たちの夢や目標を達成しても、次の日には初心に帰り、自分を磨くことをする。そんな意識があるからこそ、梅原さんは頂点に立つことができたし、AKBは売れたのだと思う。