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オチを知ってもぜったい夢中になれる小説はコレ《ゴールデンボーイ スティーヴン・キング》

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

 

ポスターのうらに穴をあけて脱獄するのでおなじみの映画『ショーシャンクの空に』 を知っているだろうか?

1994年に公開され、アカデミー賞にもノミネートされた名作だ。その原作である『刑務所のリタ・ヘイワース』がこのゴールデンボーイに収録されている。

あらすじはこうだ。

 

主人公のひとりである『レッド』はショーシャンク刑務所で、よろず屋としてタバコやマリファナ、ブランデーといったものを密輸し、囚人に売りさばく毎日を送っていた。二十歳のときに捕まり、40年もこのショーシャンクの地にいる古株だ。

そんなとき、もうひとりの主人公である『アンディー・デュフレーン』がショーシャンク刑務所に入所してくる。誰もがうらやむ地位も名誉も持っていたアンディー。30歳の若さで大銀行の副頭取を務め、財産もやまほどあり、美人な妻と結婚。そんなアンディがなぜ収監されてしまったのか。

それは自身の妻と間男を殺した罪で投獄されたのだ。しかし、アンディは裁判の間、無実を主張しつづけていた。

やがて、アンディーはレッドに様々なものを調達するよう依頼するようになる。そして、レッドはアンディーという人間を次第に知るようになる...

ーー無実を主張しながらも刑務所入りした男の運命が胸を打つ

 

まあ、最初にオチを言っちゃってるけど、アンディは脱獄する。オチが脱獄なら、「脱獄モノかよ〜」と思うかもしれないが、本書はただの脱獄モノではない。

海外ドラマ『プリズンブレイク』が代表作のようにテンポがよくて、『いかにハラハラドキドキの展開を描けるか』『次の展開を読ませないか』が脱獄モノの肝だ。そうすることで、視聴者はスリルを味わうことができる。主人公たちの身がどうなるのか、この後の展開はどうなるのか、そう思わせる仕掛けが必要なのだ。

 

 

しかし、本書ではそんなスリルを味わうようなシーンは一箇所もない。刑務所での生活や刑務所での人間関係などが中心に描かれ、非常にゆったりとした時間が流れているように感じる。

なぜ、ゆったりとした時間が流れているように感じるのか。それは、主人公のレッドが昔話をするような語り口調で、アンディやショーシャンク刑務所について語っていくからだ。いわば、小説の回想シーンがずっとつづくと考えてもらってもいい。

よくある脱獄モノならば、脱獄する本人の視点で物語が進んでいく。プリズンブレイクだったら、マイケルとリンカーンの視点で話が展開していく。だが、本書はちがうのだ。

このように本書はよくある脱獄モノとはすこし違う。「オチを知ってしまったから、読む気なくなったヨ」と思ってるあなた。決してそんなことはない。

"脱獄の方法"、"アンディが抱えていた秘密"、"そして最後の感動のフィナーレ"。この3つは本書を読まないとわからない。これらは本書を手にとり、自分の目で確認してみてくれ。オチを知っててもぜひ読んでほしい小説のひとつだ。