「弓子に救われた」イチローが語る妻の心意気《イチロー・インタヴューズ 石田雄太》
今年でメジャー16年目を迎え、42歳になったイチロー。メジャー通算3000本安打という偉大な記録まであと65本と迫っている。「50歳まで現役でいたい」と言っていたが、はたして何歳まで現役でいることができるのか。またイチローの安打記録はどこまで伸びるのか。イチローファンである自分はそんなことを楽しみにしている。
イチロー・インタヴューズを読んだ。本書は、イチローのインタビューをまとめたものだ。2001年〜2009年のシーズン、それから2006年・2009年のWBCでの出来事について書かれている。イチローは当時なにを考え、どのような行動を取ったのか。そんなことがわかる内容となっている。
ぼくがそのなかでも特別興味を持ったのは、WBCでの話と奥さんである弓子さんの話だ。
変わったのではなく、表現するようになった
2006年のWBCでのイチローを見て多くのひとがこう言った。「イチローは変わった」
変わったんじゃなくて、表現するようになった、ということです。内側に持っているものをマリナーズのユニフォームを着ているときは抑えられたけど、ジャパンのユニフォームでは抑えられなかった。なにしろ、王監督に恥をかかせられないとまで言ってしまいましたから(笑)、そのプレッシャーは大変なものでしたよ。重荷を背負おうとする自分がいたのは、自分に自信があるからじゃないですか。
妻、弓子の心意気
「200本を打つ直前、180本から190本目を打つあたりが一番、苦しかったですね。体が自由に動かないんですよ。プレッシャーで動きがおかしくなって、結果が出なくなる。だって、ご飯を食べていても呼吸の仕方がわからなくなってくるんですから。呼吸のリズムが合わなくなって苦しくなる...それくらい追い込まれてしまうんですよ」
そうしたらね、弓子が、僕が孤独だったら孤独じゃない人なんて一人もいないって言うんですよ。僕ほど見えていないところで応援してもらっている選手はいないって...僕はそのとき、自分の目で見える周りのところにしか、目が向いていなかった。だからすごく孤独を感じると言ったんですけど、弓子は『それは全然違う』と。そう言われたらそうかもしれないなぁと思いましたね。僕の目に入っていない、たくさんの人たちの目を忘れてるつもりはないんですけど、プレッシャーと向き合っているときって、グーッと入ってしまっているんですよ。だから広い視野でものが見えなくなってしまう。あの夜の彼女の言葉にはずいぶんと救われましたし、気持ちを楽にしてもらいましたね。
イチローが起きて、いつものようにソファーに座り、リモコンを使ってテレビをつけた。ふと見ると、さり気なく、一枚の写真が立てかけてある。それは、オリックスのユニフォームに身を包んだ、在りし日の仰木監督の写真だった。
「いやぁ、弓子って、カッコいいことするんですよねぇ(笑)。朝、僕が座ったらちょうど見えるようなところに、何気なく置いてあるわけですよ。その写真の監督の顔が、満面の笑みではないんですけど、すごくやわらかい笑顔なんです。」
弓子さんに聞ける機会があるならば(ぜったいないと思うけど)、なぜ仰木監督の写真を選んだのか聞きたい。まあでも「あなたは孤独じゃない。天国から仰木さんが見守っているじゃないか」という弓子さんのメッセージなんだと思う。
そんなWBCの話や弓子さんの話がつまったこの書籍。これを読んでいるあなたがイチローファンならば、一度読んでみるといいだろう。
次はこれ読む。