読書めも

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日本中を震撼させた"秋葉原通り魔事件"の真相《秋葉原事件ー加藤智大の軌跡》

秋葉原事件 加藤智大の軌跡 (朝日文庫)

秋葉原事件 加藤智大の軌跡 (朝日文庫)

 

感想

 2008年に6月8日に7人の死亡者と10人の負傷者を出した秋葉原通り魔事件のことについてのルポ。当時ぼくは高校3年生で東京にはまだ住んでいなかった。はずかしい話、アキハバラのことをアキバハラ(アキバ、という言葉は知っていたから)だと思っていたくらい東京のことをなにも知らなかった。当然、事件現場となった歩行者天国(通称:ほこ天)のことも「ほこ天?ナニソレおいしいの?」そんな知識レベルだった。

 

 先日、事件の加害者である加藤智大被告の死刑が確定した。そして、去年の4月に加藤智大被告の弟、加藤優次さん(28歳・仮名)が自殺した。職場を変えても変えても、次々とくるマスコミの圧迫に耐えきれず亡くなった。事件から7年ちかく経過したが、そんなことが起こった今こそ、この事件について知る必要があるのかもしれない。

 この本は加害者寄りの本でもないし、被害者寄りの本でもない。加藤智大被告がどんな町に生まれ、どのような家族のもとで生活し、そして事件を起こすまでを時系列順に書いている。全体の印象としては丁寧かつ淡々としている。だから特にこころが揺さぶられることなく、エピローグまで静かなきもちで読めた。

 だが、エピローグではこころが少し揺れた。エピローグに特別なことが書いてあったわけではない。事件の被害者側からの視点が書かれていたからだ。

 被害者の一人に、湯浅洋(本名)という男性がいる。彼はトラックにはねられた被害者を介抱している途中に、加藤に刺された。ナイフは肺を貫き、横隔膜にまで達した。湯浅は、その場に倒れ、意識を失った。意識が戻ったのは数日後だった。彼は一名をとりとめたものの、約1ヶ月半の入院を余儀なくされた。湯浅はタクシーのドライバーだった。(中略)

 医師は湯浅に告げた。「タクシー乗務員の仕事を続けるのは難しい」そんな湯浅のもとに、一通の手紙が届いた。加藤からだった。文章は手書きながら、文面はすべての被害者に届いたものと同じだった。被害者の中には、加藤からの手紙の受け取りを拒否した人もいた。同じ文面を送る非礼に、怒りを覚える被害者も多かった。

 湯浅はそれでも手紙を丁寧に読んだ。そして、「こんな文章を書ける君がなぜ?」という疑問を持った。湯浅は加藤に手紙を書いた。

 実際に加藤被告に宛てた手紙の内容は、本書を手に取り読んでほしい。読み終えてなんともいえないきもちが自分のなかにのこっている。

自分メモ

・淡々としている文体のルポ系は、静かな場所で読むといいかも。

→淡々としている=一定の同じのきもちのペース

・同じ淡々としている読み物として、市橋達也被告の「逮捕されるまで」