三国志にはまったあなたは次はこれを読もう《一勝百敗の皇帝 板野博行》
項羽と劉邦といえば、中国史において三国志とならぶほどの人気がある。項羽と劉邦が活躍した時代は、秦末期から前漢まで。紀元前2世紀ごろ。つまり、いまから2000年以上まえのことだ。
「国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」といった四字熟語がうまれたのもこの時代だ。国士無双は国中でならぶものがいないほど優れた人物のこと、背水の陣は失敗が許されない状況で全力をあげて事にあたること、四面楚歌は、周りに敵や反対する者に囲まれている状況のことを意味する。
そもそも、なぜ項羽と劉邦は人気があるのだろうか。三国志の人気とくらべるとわかりやすい。
三国志の人気のひとつに、戦場で活躍する個性豊かな武将たちがたくさんそろっていることが挙げられる。
袁紹が敗北し、曹操が天下統一にむけてグッと近づいた官渡の戦い。諸葛孔明が呉に赴き、呉と蜀の同盟が実現し、火計の策によって100万の大軍を撃破した赤壁の戦い。趙雲が大活躍し、張飛ひとりで数千の軍勢を追い返した長坂の戦い。劉備が蜀の大軍勢を率いて呉に戦いを挑むも陸遜に敗れた夷陵の戦い。
これらの戦いでは、多くの武将が活躍し、手柄をたてている。数々の武将たちが戦場で縦横無尽に駆け抜ける姿は、読者の胸をおどらせる。
だが、項羽と劉邦では読者の胸をおどらせる武将はでてこない。強いていうのであれば、兵法にくわしく劉邦軍を大将軍として率いた韓信、もしくは王として項羽軍を率いた勇猛果敢な項羽くらいだろう。
なぜ、こころ惹かれる武将がでてこないのか。それもそのはず。項羽と劉邦は、このふたりがやはり主役だからだ。かれらにスポットライトが当たっているのだ。
平民出身で女と酒にだらしないが、張良や蕭何、韓信といった優秀な人材が集まるカリスマ性をもつ劉邦。名家の出身で誇り高く勇猛果敢だが、気性が荒くひとりよがりの項羽。あなたはどちらの人物にこころ魅かれるだろうか。
本書は、そんな項羽と劉邦が生き抜いた時代を丁寧にわかりやすく図をなどを用いて書いている。これを読んでいるひとが、三国志にはまったひとなら、項羽と劉邦にものめり込むことまちがいなしだ。