読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

知っていますか?年間4000の犬が殺されていることを。《犬たちをおくる日ーこの命、灰になるために生まれてきたんじゃない 今西乃子》

内容(「BOOK」データベースより)

捨てられる命を一頭でも減らす社会へ―。日本一の動物愛護センターを目指して、日々、奮闘する愛媛県動物愛護センター職員たちの日常を追いながら、命の尊さを考えるノンフィクション。

感想

サブタイトルの『この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』が胸に響く。本書の主人公である動物愛護センターのひとたちの悲痛なメッセージのような感じがするからだ。

本書の舞台は、愛媛県動物愛護センター。ここには、1年間で4000頭ものの犬が持ち込まれ、処分される。しかも処分する費用は、すべて税金で賄われている。収容犬と収容ねこのえさ代が年間180万、処分後の死体を焼却する焼却燃料に、年間300万円以上もの税金が投入されている。建物や機械をつくるにあたっては、数億円以上かかっている。

そんな動物愛護センターではたらく職員のひとたちにスポットライトを当てて、動物殺処分の現状、センターで起こる日常が書かれている。

児童書だから、漢字にふりがながついているんだけど、それが本書が扱うテーマの重さを軽減している。ひらがなが多くみられるぶん、やわらかさが出ているのだ。だから、読んでいて重々しい感じはしない。

 

第4章の『命のイス取りゲーム』と題されたタイトルがいちばん印象にのこっている。命のイス取りゲームとは、動物愛護センターが主催する譲渡会でえらばれる動物たちの状況のことを表現している。

譲渡会とは、月に一度開催されており、センターが保護した一部の動物を一般の人々に譲っているイベントだ。だが、保護された動物全員が一般の人々の手に渡るわけではない。譲渡用としてえらばれやすい第一条件は、健康。第二に性格が人懐こいことである。

そして、選別はすべてセンターの人間が行うことになっている。だから、譲渡用にえらばれない限り、犬たちは「死」をまぬがれる術はない。

一年間でこのセンターに持ち込まれる犬の数は、約4000頭。そのうち譲渡会に出されるのは、約10頭。なぜそんなに少ないかというと、譲渡するまえに、センターのスタッフによって訓練させなければならないからだ。このトレーニングをしっかりやっておかないと、他の犬と上手に付き合うことができず、人や犬を見るとほえたり、こわがったりするのだ。

ちなみに、殺処分の数は年々減ってはいるものの、まだまだ処分される数は多い。

参考)平成16~25年度の犬・猫の引取り状況

年度合計
引取り数処分数引取り数処分数引取り数処分数
返還・譲渡数殺処分数返還・譲渡数殺処分数返還・譲渡数殺処分数
平成16年度 181,167 25,297 155,870 237,246 4,026 238,929 418,413 29,323 394,799
平成17年度 163,578 24,979 138,599 228,654 3,936 226,702 392,232 28,915 365,301
平成18年度 142,110 28,942 112,690 232,050 4,427 228,373 374,160 33,369 341,063
平成19年度 129,937 29,942 98,556 206,412 6,179 200,760 336,349 36,121 299,316
平成20年度 113,488 32,774 82,464 201,619 8,311 193,748 315,107 41,085 276,212
平成21年度 93,807 32,944 64,061 177,785 10,621 165,771 271,592 43,565 229,832
平成22年度 85,166 33,464 51,964 164,308 11,876 152,729 249,474 45,340 204,693
平成23年 77,805 34,282 43,606 143,195 12,680 131,136 221,000 46,962 174,742
平成24年度 71,643 33,269 38,447 137,745 14,858 123,400 209,388 48,127 161,847
平成25年度 60,811 32,092 28,570 115,484 16,320 99,671 176,295 48,412 128,241

(引用)環境省自然環境局調べ

以下のことばが動物殺処分の問題をぼくたち人間に突きつけている。

しかし、救える命には限りがある。捨てるのは簡単だが、救うのは簡単ではない。捨てる人間が減らないかぎり、灰になっていく命も減りはしないのだ。

一匹でも多くの犬たちが生きれる世になれば、と願うばかりだ。

自分メモ

1.動物愛護センターは、だれかの責任追及する場じゃない

だれかの責任追及することが、この施設の目的じゃありません。その処分の実態を知っていただくことで、自分にできることは何かを、みなさんに考えていただきたいんです。そのためにこの施設を開放しています。

2.かわいいでは飼えないし、かわいそうでは救えない

犬もねこも「かわいい」という一時の感情で飼うことはできない。また「かわいそう」という感情だけでは救うことはできないのだ。

 

こちらは9月に新書としてあたらしく発行される予定です。