お化けといわれた子《リサ・H エレファント・マン病とたたかった少女の記録》
- 作者: リチャード・セヴェロ,加藤恭子,山田敏子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1992/09
- メディア: 単行本
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内容(帯より)
顔面を覆いつくすコブのような腫瘍、垂れ下がる茎状の肉。生まれた時からエレファント・マン病におかされた少女は、どう家族と暮らし、学校へ通ったか。そして21歳の時の大手術。新たな顔を得た彼女の、さらなる心の傷と自分へのとまどい。全米で注目されたヒューマン・ドキュメント。
感想
神経線維腫症(しんけいせんいしゅしょう)。レックリングハウゼン病とも言う。
このなんとも読みづらい病は人間の皮膚や内部の器官(肺や脳など)に大小の腫瘍ができ、3000人に1人の割合で発症するといわれている。この病の専門家はすくなく、対処療法はいまだ見つかっていない。
本書は、そんな難病にかかったアメリカのペンシルバニアに住むひとりの少女と家族を描いたノンフィクションだ。彼女の名前はリサ。
彼女が小学生を迎えたころに病はすでに身体を蝕んでおり、それは一目でわかるほどであった。著者のリチャードさんがはじめてリサと対面したときの様子をこのように書いている。
巨大な腫瘍が顔の両側にたれさがっている。口の両端にはぼってりとした、いく筋のもの茎状の肉が垂れ下がり、口の輪郭をとどめていない。彼女には世間で言う鼻がない。目鼻立ちというものが無いのだ。こぶの集合体以外の何ものでもない。
顔としての凹凸がない。眉はぶ厚く、節くれだった木のようにごつごつとしてもり上がり、腫瘍の中にのみ込まれている。腫瘍は顔面をおおいつくしているようにみえた。と言うよりは両眼のわきから耳に向かってのび、左側はあごの下のほうにまで伸びていた。腫瘍がまわりに多いために、その重みで皮膚が垂れ下がっている。
ちなみに、レックリングハウゼン病は緑内障を合併することが多い。腫瘍が目に圧を加えるからだ。リサも同様に生まれたときから、緑内障を抱えていた。
そして、時が経つにつれて、腫瘍によってリサの顔は徐々にくずれていく。この病が進行するにつれて、彼女は絶え間ない中傷や攻撃を周りから受けることになる。
時には、小学校のバスの運転手から「おやあ、お前さんときたら、おじさんが今までに見たいちばんひどい顔だなあ」と言われたりもした。
しかし、彼女は多くの誹謗中傷を受けても、相手を傷つけたり、他人にし返すことはしなかった。いったいなぜだろうか。
リサは、同級生たちの偏見を、自分自身で取り除いていった。あるとき、リサがバスに乗り込むのを見た同級生たちが、「お化けが来るぞ!お化けが来るぞ!」と叫んだことがあった。
バスに乗り込んだリサは、「ウォー、お化けだぞー、お化けだぞー、ウォー」と応じたのだった。
「悲しいことですよね。でもおわかりだと思いますが、あの子もゲームをしていたんです」と叔母のガートは言った。
「同級生たちは、リサにお化けになってほしかったのです。ですからあの子は、お化けになってやったのです」
それは、まちがいなく家族の存在がそうさせたのだろう。彼女の家族はどんなときでもリサの味方をし、病気がハンディキャップではないといつも彼女に言ってきかせた。
とくに姉のダイアンはリサと仲良しで、リサはダイアンをすごく信頼していた。ダイアンもまたリサのことを信頼していた。そんなダイアンが妹のリサを想い読者を驚かせるような行動を取った場面がある。リサが手術をするために、髪の毛を剃ってしまったときの話だ。
医師は、手術のためにリサの髪の毛を全部剃ってしまったんですが、その手術がすむと、ダイアンは出かけていって、自分の髪も剃ってきてしまったんです。いちばん長いのでも1インチたらずだったと思います。
そしてリサが退院すると、ダイアンは自分の頭を指してどっちが速く元通りになるか競争してみようと言ったんです。なんて優しいひとかしらと思いました。
そんな家族が近くにいてくれたからこそ、多くの誹謗中傷を受けても、生きていけたのだ。
そして、リサはあるとき主治医のリントン・ウィティカーらと出会い、不可能にちかい手術に挑むことになる。その手術内容とは、古い顔をバラバラにして、まったくあたらしい顔をつくりあげるというものだった。
しかも、手術は複数回にわたって行われ、常人ならばありえないほどの麻酔を何度も何度も打たれるという大変危険なものだった。彼女はすぐさまその危険な手術を受けると主治医のリントンさんに伝えた。いったい、なにが彼女をそうさせようとしたのか?
手術を受けるまえにリサは著者にこう語っていた。
リサ:「三歳のときだったけれど、四歳まで生きられないだろうと言われたの。私、自分のことがあまり好きじゃないし、自分がどうしたいのかもわからない。ただ、人間として扱ってもらいたいだけなんです。 」
そして、その手術を受けて、リサは...
リサがどうなったかはぜひ本書をよんで確認してほしい。