読書めも

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17歳からキャバクラで働いていたギャルがAVに出演すると母に告げたら絶縁された話《うちの娘はAV女優です アケミン》

AV女優の仕事が友だちにバレることを業界用語で『友バレ』彼氏にバレることを『彼バレ』という。『友バレ』や『彼バレ』をして辞めていった女優は数知れない。大学や専門学校に通いながらAV女優をしていたが、ネットの掲示板の書き込みによってバレて引退したというのは実際にあった話である。

一方で、少数派ではあるが、『友バレ』や『彼バレ』をしてもつづける女優はいる。

 

 

北村玲奈さんは今も活躍する現役AV女優だ。彼女はAV女優としてデビューする前に高校の同級生にFacebookバラされた。デビュー前の女優の心境はナイーブだ。

ここで辞めても不思議ではない状況下で、北村さんは強気の反撃に出る。なんと自分のFacebookでしれっと自身の作品の宣伝を行い、AV女優になったことを皆に報告したのだ。

なんともスカッとする対応だ。この対応で北村さんの好感度は爆上がりした。

 

同じく現役AV女優の湊莉久さんは同級生に脅されたが、湊さんは華麗にスルー。ワンチャン狙いの輩の願いは儚くも潰えた。

 

 

北村さんや湊さんのようにAV女優であることをオープンにできるひともいるが、なかなかそうはいかないケースが多く、そのまま引退ということはよくある話だ。

AV女優にとって『友バレ』『彼バレ』は辞める原因のひとつではあるが、そのなかでも特に恐れられていることは親にバレること(親バレ)だ。

親バレをして辞める女優は特に多く、親バレをした子の7割〜8割は辞めていく。しかも、デビュー間もない子の多くの引退理由は『親バレ』だ。

ネットが発達したこともあり、この仕事は昔に比べ、周囲にバレる確率はグンと上がっている。さらに、AV業界の市場は10年まえに比べ小さくなっているが、AV女優の数は増えつづけており、競争が激化している。

ゆえに、AV女優はPR活動が必須で、雑誌やテレビでの露出、SNSの積極的な活用、イベントの開催などが求められる。

「周囲にバレたくはないけど、AV女優として売れたい!」なんてことは通用しない。PR活動をしない女優にはよっぽどのことがない限り仕事がこない。

PR活動を積極的に行うということは『友バレ』『彼バレ』そして、『親バレ』の可能性は上がるし、それを覚悟しなくてはならないのだ。

 

うちの娘はAV女優です

うちの娘はAV女優です

 

 

『うちの娘はAV女優です』を読んだ。本書は『親バレ』をしつつも、AV女優としての仕事をつづけることを選択した10人の女性にインタビューしたものである。

親バレ』をした女優の7割〜8割が辞めていくにもかかわらず、なぜ彼女たちはAV女優をつづけることを決断したのか?娘から仕事のことを聞かされた親はどんな反応をしたのか?

親の反応は様々で十人十色である。所属事務所に乗り込み、契約を打ち切ろうとした親、あっさりと娘の仕事を認める親、音信不通になる親。

第8章で登場する成宮リリさん(仮名)の親はあっさり認めたケースだ。

成宮リリさんは現在2年目の企画単体女優である。中学時代からAV女優(特に上原亜衣)に対して強い憧れをもっており、大学に入学後この世界に入った。それを聞いて成宮さんの親は安心したという。

というのも成宮さんは中学・高校のときから男性をとっかえひっかえしており、それを両親はよく知っていた。成宮さんはこう語る。

 

「もともと親は私がエロに対して興味のある子だなって気づいていたみたいで。遅かれ早かれキャバや風俗とかに行くんだろうなって思っていた。ヘタに不特定多数の素人と関係を持って性病になるよりは、AVでプロを相手にして一つの作品としてキチンと撮ってもらったほうがいい。そう言ってAVは賛成していました」

 

いまでは家族全員が彼女の出演作に目を通しており、母親にいたっては毎回DVDを買って家に置いている。このように家族全員でバックアップしている例はなかなかない。

だいたい両親のどちらかが難色を示すか、兄弟が反対することが多い。それこそ家族会議が開かれ何時間も話し合い...というケースもあった。

様々なケースがあるなかで、最も驚かされたのは母親が娘の戸籍を抜いたことだろう。これは第6章に登場する丘咲エミリさんの母親が実際にとった行動だ。

丘咲エミリさんは読者モデル出身の元AV女優だ。幼少期から父親の暴力がひどく、彼女が高校生のときに両親は別居することになった。母親と一緒に暮らしはじめたが、働き手の母親がうつ病にかかってしまう。一家の大黒柱になるべく彼女は17歳でキャバクラに勤務することになった。

当時は読者モデルの仕事もやっており、精神的・経済的負担は半端なものではなかったが、なんとか高校を卒業し、服飾系の専門学校に入学した。

しかし、丘咲さんの身体は突如限界を迎える。医者からうつ病と診断されたのだ。考えてみれば、無理もない話である。学校に毎日通い、友だちと遊ぶ暇はなく、生活のために仕事をしなければならない。家に帰ったら、母親の介護もあった。

生きる気力をなくした丘咲さんは母親と無理心中しようとしたが、友人の助けがあり、奇跡的にふたりは一命をとりとめた。やがて、ふたりは少しづつ回復していき、丘咲さんも雑誌モデルとして活躍し、ときにはテレビにも出るようになっていった。しかし、所属事務所からギャラの未払いが目立つようになり、事務所への不信感が募っていった。

モデルの仕事は好きだが、これ一本だけでは食べていけない。かといってキャバクラはやりたい仕事ではない。事務所への不信感、現状へのモヤモヤを抱えていたそんな矢先に、AVのオファーが来ることとなる。

最初こそ断っていたが、半年かけて説得されたこともあり、丘咲さんは元タレントの肩書きで華々しく単体デビューすることになった。

意を決してAVに出演することを母親に電話で打ち明けたが、その日のうちに着信拒否をされ、家を追い出されしまった。やむなく引越し手続きのため役所に行くと、驚くべきものを目にする。

 

「戸籍を抜かれていました。窓口で調べてもらったら私の籍はお父さんのほうにあって。そのとき『本当に勘当されたんだ』『絶縁されたんだ』って突きつけられたね。仕事頑張るしかないな〜って」

しかし、エミリは母親への毎月の振り込みはかかさなかった。

「事務所の人が電話で話したときにも母親は『もう、お金も送らなくていい、お前の金なんていらない』って言っていたんですよ。もちろん、払わなくてもよかったかもしれない。でも口ではそう言ってるけど、生活きつくなるのは目に見えているし、会えない、連絡取れない、その中で唯一私ができることはお金を送ることしかなかった。責任感というよりも罪悪感ですね」

 

実の母からの絶縁宣言。丘咲さんは悲しみに暮れたが、デビューすることはすでに決定しており、もう後戻りすることはできなかった。

元モデルという肩書きで順調に仕事をこなしていた彼女のもとに一本の電話がかかってきた。それは、半年ぶりに話す母だった。

半年ぶりにかかってきた母の第一声はなんともキツい一言だった。

 

「あなたのやっていることは、私には理解できないし、理解したいとも思わないし、軽蔑しています」

 

心にグサッとくる一言だったが、母からの口からは意外な言葉が続いた。

 

「ただ私がお腹を痛めて産んだ娘には変わらないから。これからは娘として接していくね。仕事だけは許してないし、理解していないし、それだけはわかって」

 

これに対して丘咲さんはこう返した。

 

「ただ私は『ここで引けない、辞められない』そう伝えました。ここで辞めたらほら見たことかって後ろ指をさされる。『あいつ脱いだよな』『堕ちたよな』って言われて終わるだけ。何かしら結果を残さないと私、辞められない。そう言ったのをよく覚えています」

 

この電話をきっかけにふたりは連絡を取り合うようになり、娘と母の関係は修復された。

 

余談だが、本書に登場するAV女優たちは親に仕送りしている人が多い。業界を見渡しても親に仕送りする女優は一定数いるという。そのなかで仕送りの額が飛び抜けてすごかったのが第9章で登場する桜井あゆさんだ。

桜井さんは2013年にデビューし、2016年に引退した元AV女優だ。10代のころから夜の世界を経験し、22歳のときにこの世界に入った。

桜井さんは18歳のころから6年間、毎月80万〜100万を母親に仕送りしている(現在も)これを知ったとき、大学までの学費を親に払ってもらっていた自分の身がこのうえなく恥ずかしく感じた。

そんな桜井さんの親は自分の娘の仕事を聞いたとき、どのような反応だったのだろうか。

 

「反応は『あ、そう』って(笑)。『あんたが死ぬこと以外、なにも驚かないよ。どうせ私たちが止めたところであんたはやるでしょ。だったらやればいい。ただ体には気をつけなさいね。やりたいところまでやってみなさい』ってLINEがきました。さすがにそれには驚いたけど私も『絶対に恥ずかしくないくらい有名になるから』って伝えましたね」

 

本書を読んでいるときに『親バレ』をして辞めていく女優と『親バレ』をしてつづける女優の差はなんだろうとぼんやり考えていた。そして、読み終えたとき、本書に登場するひとたちの共通点がひとつあった。

それは、確固たる意志をもっているということだ。「親と縁を切ってでも、この世界で戦っていく」「負けてたまるか。バカにしてるやつらを見返してやる」という思いが強い。

特に顕著だったのは丘崎さんや桜井さんだった。負けん気が強く、バイタリティに溢れ、明るくていつも前を向いている。

逆にいえば、この確固たる意志がなければ、『親バレ』という大きな壁を乗り越えることはできず、辞めていってしまうのだろう。

 

まったく関係ないのだが、表紙が母親と娘のツーショットだったので、著者のアケミンさんが母親で、アケミンさんの娘がAV女優であることをつづったエッセイ本だと思っていた。しかし、この表紙のツーショット写真は桜井あゆさんとその母親である。

読み応えのあるいい一冊だった。

 

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