読書めも

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広島カープの立役者は黒田じゃない。この男だ!《変わるしかなかった 野村謙二郎》

変わるしかなかった。

変わるしかなかった。

 

あらすじ(アマゾンより)

なぜ、カープは変わることができたのか?
監督・野村謙二郎が明かす、その真実。
5年間書き溜めた20冊を超えるのノートにあったもの。

長い間低迷していたカープは、この2年急激な変革を遂げた。
2013年に16年ぶりのAクラスそしてクライマックスシリーズ初出場、昨シーズンの優勝争い……。
なぜ、カープは変わることができたのか? 野村謙二郎が綴る哲学と苦悩。

「最初に意識したのはとにかくチームにインパクトを与えること
だから殴り込みのような勢いで突っ込んでいった――。
勝つためにカープは変わり、僕も変わった。勝てないチームから勝てるチームへ」

・ 王さんに背中を押されて覚悟を決めた堂林の起用。
前田智徳復活のために、交わした会話と取り決め。
・ 初めてのキャンプで見せた菊池のケタ外れの吸収力。
・ 電撃復帰を予感させた、黒田博樹からの言葉。
・ 自分自身への怒り、選手、コーチへの気付きが封じ込められた手帳の存在。
・ そして、キクマルが正真正銘のリーダーになるために必要なこととは――。

感想

 8年ぶりに日本球界にカムバックした黒田博樹、同じく阪神から広島にもどってきた新井貴浩。メジャーに行かず、日本球界に残った前田健太。主砲のキラ、エルドレッド盗塁王丸佳浩。そして、チームは2年連続CS出場。今年の広島の顔ぶれをみれば、確実になにかやってくれる、今年こそ優勝してくれるんじゃないか、そんなことはぼくが言わなくてもメディアの盛り上がりをみていればわかる。

 でも、この盛り上がりは20億を蹴り、帰ってきた黒田でも、古巣にもどってきた新井がつくったのではない。2010年から2014年の5年間、広島カープの監督を務め、チームの底上げをした野村謙二郎がこの盛り上がりの立役者だとぼくはおもっている。

 野村さんが就任した当時の広島というと、20年ちかく優勝から遠ざかっており、1997年に3位になって以来ずっと上位争いに加わることができておらず、チームには負け癖がついている状態。

 それを2013年に初のCS出場、あと一歩のところまで巨人を追い詰め、2014年にもCS出場し、阪神に敗れたものの、存在感を発揮するまでのチームにした。

 広島カープが今年優勝し、毎年Aクラス争い常連となり、黄金時代を迎えることになったら、きっとそれは野村謙二郎がいたからだ、とカープファンは口をそろえて言うだろう。それくらいのことを彼はやってみせたのだ。

 

 本書は、野村さんが監督としてチームを率いた5年間の記録だ。今年から広島カープファンになった野球初心者のひとでも楽しめるような内容となっている。そのなかで監督という肩書きをずっしりと感じられるシーンがある。

監督をやっていてもっとも苦しかったのは、選手を二軍に落とさなければいけないことだ。それに比べたらメディアに叩かれたり、ファンからヤジを浴びることくらいなんでもない。それは自分が背負えばどうにでもなるからだ。

だが、監督はどんなに頑張っている選手でも二軍に落とさなければならないときがある。彼らに家族も子どももいることも知っている。自分も選手時代を思い出すと、使ってくれない監督は嫌われるということはわかっていたので、彼らの苦しさや怒り、やり切れない気持ちは肌に刺さるように感じられた。

眠れない日が何日もあった。シーズン中、2日間寝ずに試合に臨んだこともある。「このまま自分はどうなってしまうんだろう?」とどうしようもない不安に襲われ、気がつけば朝になっていた日もあった。

 あの三冠王を獲得した落合さんでも、中日ドラゴンズの監督に就任してから睡眠薬がないと寝れない生活を8年間も続けたのだから、プロ野球の世界がいかに厳しいものか感じることができるはずだ。

 

 今年は黒田博樹が広島にもどってきたので、ぼくはカープを応援しているのだけど(ちなみに現在最下位(´・ω・`) )、この本をよんでますます広島カープのことがすきになった。