読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

ウェブはバカと暇人のもの 中川淳一郎

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

 

 内容と感想

TwitterFacebook、Blogの登場で、企業に属さなくても自分の名前で戦える時代がきたし、ネットは革新的なモノだと思っていました。その他にもクラウドファンディングなどが生まれ、資金調達もできるようになったから、ネットはすごいツールだ!と思っていました。

ところがどっこい、「インターネットは気持ち悪い」「ネットは革新的なものでもなんでもない」「ネットでブランディングはできない」などなど、ネットに対して自分が思い描いていたことと全く違った現状が書かれていました。

著者の中川さん自身ネットニュースの編集長であり、いわば日々ネットの中で仕事をしている人だからこそ、説得力がすごくあります。

ネットの本質をこれだけ分かりやすく書いた本は他にはないかと思います。

 

たとえば、

凡庸な人間がネットを使っていきなり優秀にはならない

インターネットというツールを手にしたことで、人間の能力が突然変異のごとく向上し、すばらしいアイディアを生み出すと考えているのはあまりに早計ではないか?そりゃあ、これまで発信の機会のなかった人が発信できるようになったのはすばらしいことだが、発信する内容自体に価値のある人は、ネットではなく、リアルの世界でもその発信内容が「換金」されるはずだ。

断言しよう。凡庸な人間はネットを使うことによっていきなり優秀になるわけではないし、バカもネットを使うことによって世間にとって有用な才能を突然開花させ、世の中に良いものをもたわすわけでもない。

むしろ、凡庸な人が凡庸なネタを外に吐き出しまくるせいで本当に良いものが見えにくくなることや(ネット上の良い発掘機会が失われるだけでなく、本を読んだり人と会話したりすることにかける時間も減る )、バカが発言ツールを手に入れて大暴れしたり、犯罪予告をするようなリスクにこそ目を向けるべきである。

パソコンが安くなり、ネットが誰でも使えるようになり、情報発信をできるようになったからといって、優秀な人が突然生まれるわけではない。考えてみれば当然のことです。

普段からネットをよくやる人には「あー、あるあるだわー」と思うような箇所がいくつも出てくるので、ネット好きな人にはもってこいの一冊です。

疑問

ウェブはバカと暇人のものというタイトル名以外の候補は?

読書メモ

1.品行方正で怒りっぽいネット住民

突然だが、あなたは立ち小便をしたことがあるだろうか?女性は経験ないだろうが、多くの男性はやむにやまれぬ事情で立ち小便をしてしまったことがあるはずだ。家族や友人に「いやぁ、昨日は飲みすぎて我慢できなくなって立ちションしちゃったよ。ハハハ」などと報告したら「馬鹿ね。ちゃんとトイレに行っておきなさい」と言われておしまいである。

だが、これをブログで告白したら問題になるだろう。特に名前を一部から知られている人(芸能人や社長等)がブログで書いたら、「通報しますた」「軽犯罪法違反ですよ」「なにブログで自慢してんだw」などのコメントがつけられ、場合によっては炎上するだろう。

しかし、わざわざ「軽犯罪」だと言って「通報」したり、「人としていけないこと」だと注意するほどのことか。そもそも、実際に立ち小便している人を注意できる人はなかなかいない。

リアルの世界ではこんなこと言わないのに、ネットの世界では品行方正の人が急増する。一時期ソーシャルゲームであるアメーバピグにはまりましたが、まさにこういったやりとりが行われていました。

小学生がちょっとした犯罪自慢みたいなことをすれば、高校生や大人が「いまのスクショ(パソコンの画面に写っているものを写真でとること)とったから。警察に通報するね」とか。そんなやりとりが日常茶飯事でした。

 

2.被害者がいるなら、ここに連れてこい

吉野家で肉・たまねぎ抜きの牛丼を注文した。という記事を書いたのだが、それに対して「忙しい店員さんに失礼です!」と批判が殺到したのである。この記事がアホなものであったのは認めるが、当圏のミソは「吉野家の店員」 はまったく怒っておらず、関係のない人が怒っている点である。

もはや、「不快だ!」→「圧倒的な有利な立場からクレームをつける」→「なんだかよくわからないが、怒っている人がたくさんいるから謝る」という流れが定着しているのかもしれない。

 

3.ネットは安っぽい企画こそ支持を得られる

ネットでは、身近で突っ込みどころがあったり、どこかエロくて、バカみたいで、安っぽい企画こそ支持を得られるのだ。そして、掲示板やブログで「○○社のキャラがあまりにもゆるすぎるwwwww」「○○社のキャンペーンがアホすぎる件」など書かれたらそれこそ大成功である。

これを言うと企業の人は「ネットってバカみたいじゃないか!」と驚く。だが、「はい、馬鹿みたいなんです。そういうものなんです。人々の正直な欲求がドロドロと蠢いている場所なんです。友達と飲んでいるときに、「このビールはコクがあってノドゴシがすっきだね」「そうだね。やはり酵母の力が生きているからじゃないかなあ」なんて宣伝臭ただよう話をしますか?」

しませんよね。一番搾りのCMに出てくるあの湯葉うまそうだな、よし湯葉頼もうぜ」みたいな話しませんか?それが人々の関心だし、語りたい内容なんです。ネットもこれと同じなんです。 

ネットは暇つぶしの場であり、人々が自由に雑談する場所なのである。放課後の教室や、居酒屋のような場所なのである。

 

4.ネットは雑談の場

ネットを、企業の考えを一方的に押し付ける従来の「媒体」ととらえてはダメだ。繰り返すように、ネットはあくまでも自由な「雑談の場」人々が居酒屋で交わす会話をコントロールできないのと同じで、ネット世論だって強引に変えることはできない。

その雑談に「あのぉ、こんなおもしろいネタあるんっスけど、どうっスか?」と控えめに入るくらいがちょうど良いのである。