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【書評】マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった ジョンウッド

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

 

◎内容と感想

今や、100万以上の本をネパールに寄付し、スマトラ島沖地震では真っ先に現地で活動し、多くの図書館と学校を建設したことで有名なNPO法人Room to Read

Room to Readの主な事業は、発展途上国に図書館,学校の設立など、事業目的は、発展途上国の識字能力向上。そしてこの本はそのRoom to Readの創始者ジョン・ウッドの物語


以下あらすじ

ジョン・ウッドは中国のマイクロソフトの統括、マイケルの右腕となる存在であった。日々、何十億というお金が動かし、それらを運用し、仕事漬けが続く毎日

しかし、マイクロソフトというITの最先端を走り続ける企業で働けていることに対してジョンはなんら不満に思っていなかった。運転手付きの車で毎日送り迎え、巨万の冨、豪華なマンションの一室、美人の恋人。何一つ不自由はない生活であった。そんな時にジョンは長期休暇をとり、旅行に出かけることになる

場所はネパール。ネパールは、教育制度が整っていなく、非常に貧しい国だ。そして、ネパールの学校に訪れて校内を案内してもらった。学校には一つの図書館があった。しかし、その図書館の中には、本は一冊もない。全校生徒は450人いるのに対して本は全くない。子供頃からずっと本を読み、読書の楽しさを知っているジョンからは考えられないことだった

ジョンは、決意する。ここに本を届けることを!本を届け、子供達を笑顔にすることを!しかし、その先にはいくつものの試練が待ち受けていた....

この本は、とにかくジョン・ウッドの唸るような思想や哲学がたくさんでてきます。その思想や哲学の多くはマイクロソフトで培われたもので、文章の中でそのことについて綴られています。

 

1.その冨を使って何をするか?

物質的な冨があるかないかは関係ない。本当に大切なのは———その冨を使って何をするか?だ。僕は、若くして経済的に裕福になったがそれは運に過ぎない。たまたまふさわしいタイミングで会社に入っただけ。お金を持っている人が素晴らしい人間ということではない

 

2.泣き落とし作戦はダメ!

世界に貧困があるのはみんな知っているし、誰もがその事実に悲しんでる。一部の慈善団体は、ハエがたかった子供の死体の写真や栄養失調で苦しんでる写真を見せると寄付金効果があると思っている。そういうことをしているセレブも実際にいる。

でもそうすることで貧困者をおとしめる。罪悪感をマーケティングに利用してはならない。そんなことでは寄付金は集まらない。

 

3.お金持ちは人生に楽観と希望を求めている

みじめな写真で寄付を呼びかけたら、悲しいとは思うだろうが行動はおこさない。代わりに、山奥の村の子供が帽子とガウンを着て、卒業式に臨む写真や手術が成功してにっこりと笑っている少女、農村で新しい井戸から水を組む少年そんな写真を見せた方が寄付をもたらす希望を共有できる

 

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特に下の2つは共感する方が多いかもしれません。NPOは社会問題を解決する団体です。どこの団体も資金がかつかつで、寄付金を頼りにしている団体が多いです

多くの団体が自分達の取り組む問題・課題がいかに悲惨で早急に手を打たなければならないかというメッセージを発信します

ところが、その問題というのはどこか教科書や本で聞いたことがある。多くの人はこう思います「それは知ってるんだけど...w」

悲惨な問題を掲げただけでは人はなかなか動きません。なぜなら同情で人を行動させることはできないから

大事なことは、ビジョンを語ること。その課題を解決した時にこんな素敵な世界が広がっている。そしてあなたにとってこんなメリットがあって幸せになれるんだよと語ることが大事じゃないかなと思います

そして、個人的にはこれが一番心に残りました。

 

価値観=その人にとっての優先順位。

 2人とも間違っていない。それが人生だ。僕たちはそれぞれ違う優先順位を持っている。彼女を今も尊敬してるし、自分で選んだ道で活躍する彼女の姿を見て嬉しいとおもうただこれまでの条件に合わせて「最適化」した人生を送りたくなかった。

これは、ジョン・ウッドがマイクロソフトを退社することを決めて、当時付き合っていた彼女と別れる直前の心の声。

僕はこの言葉を読んで、価値観という言葉の意味を初めて理解しました。よく「それぞれの価値観でよくない?」や「価値観あわないね」という言葉を耳にしますが、価値観ってなんやねん...と思っていました。

でもこの言葉を聞いて納得したかもしれません。人間は、生きていく中で取捨選択をせねばならない。別の言い回しでいうと物事に優先順位をつけるということ

そして当然人によって優先順位は違う。その優先順位のことを価値観と言うんじゃないかな。

また価値観というものは年をとるに連れて変わっていくなぜならその時その時によって優先順位が変わるからである。

と、まあ社会起業家に興味がある方はもちろん、発展途上国支援に興味がある方もぜひ見ていただきたい一冊となっています。