読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

学校ではおしえてくれないイラク戦争の真実《イラク米軍脱走兵、真実の告発 ジョシュア・キー》

イラク―米軍脱走兵、真実の告発

イラク―米軍脱走兵、真実の告発

  • 作者: ジョシュアキー,ローレンスヒル,Joshua Key,Lawrence Hill,井手真也
  • 出版社/メーカー: 合同出版
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 35回
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

内容(BOOKデータベースより)

貧しい人びとをだまして戦地におくる、アメリカ格差社会の現実。イラクでの蛮行の数々。そのすべてを元兵士が書いた。

著者プロフィール(BOOK著者紹介情報より)

キー,ジョシュア

元アメリカ陸軍上等兵。1978年、アメリカ・オクラホマ州生まれ。2002年4月、アメリカ陸軍入隊。イラク戦争開戦から3週間後の2003年4月、イ ラク中部の最前線へ赴く。現地でアメリカ軍によるイラク市民への数々の非人道的行為、戦争犯罪を目の当たりにし、一時帰国中の2003年12月に軍からの 脱走を敢行。追っ手を逃れながら家族とともに1年以上にわたりアメリカ各地に潜伏した後、2005年、国境を越えカナダへと逃亡。現在、反戦NPOの支援 の下、カナダ政府に対し難民認定による保護を求めながら同国で暮らしている

感想

タイトルの脱走兵というワードをみたとき、映画みたいにハラハラドキドキの逃走劇のようなイメージが浮かんだ。ところが、そんな映画の世界とはかけ離れた生々しい記録だった。

そもそも、脱走劇の様子に関しては、ページのごく一部にしか割かれていない。本書のほとんどの記述が、イラク戦争がどのようなものであったか、どれだけ悲惨なものであったかといったことだ。

 

かつて、第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは、イラク戦争の意義についてこうスピーチした。

「われわれは、われわれが支持し擁護する自由、民主主義、寛容、人権、個人の尊厳を憎むテロリストと戦っています。アメリカは平和を愛する国民です。しかしながら、喜んであらゆる危機に立ち向かいます。われわれは、イラクアフガニスタン、世界のその他の場所でテロリストと戦っています。

われわれの町の路上でテロリストと戦わなくてすむようにです。そして、われわれは勝利するでしょう。アメリカは、われわれの自由を守り、国を守ってくれる軍人があってこその国なのです」

だが、実際の戦地ではこんなキレイな言葉とはかけはなれた凄惨な状態であった。まったく関係のない市民への射殺、家宅捜索先での窃盗、捕虜への拷問、レイプ。そんなことが日常だった。

イラクに入って間もない頃、ある家で100ドル見つけた。ぼくはそれを引っつかむと、ポケットに押し込んだ。手錠をかけられて連行されようとしている男が、ドアのところからぼくに向かって大声で怒鳴りつけた。

「その金をどうするんだ。お前のものじゃない」

「これはアメリカの金だ。お前はアメリカ人じゃないから、どうのこうの言う権利はない」とぼくは言って、ポケットの金を返さなかった。宝石に金。よさそうなものなら、遠慮なくもらった。(中略)

 

小隊の連中は好きなだけ略奪していた。金製の装備具を集めて、国の女房に送ったやつもいたし、家からテレビを引きずりだしたやつもいた。飾り彫りのあるナイフを盗んだやつもいたし、あるときは豪華なじゅうたんを持ち出したやつも見た。誰も止めはしない。われわれはアメリカ合衆国の軍隊で、なんでも好きなことができるのだ。

秩序やルールはない。なんでもアリな状態のアメリカ軍。そこには、正義なんてものはなかった。これがたった13年前のイラクで実際に起きていた出来事だ。なんとも信じられない事実である。

当時の精神状態を著者のジョシュア・キーさんはこう語る。

ぼくの善悪を判断する力は、兵士であること、危険にさらされていながら無防備だという感覚、イラクで殺すべき敵がはっきりしないことなどがプレッシャーとなって、狂っていた。われわれは、敵をぶちのめすよう奨励されていた。

しかし、これというはっきりした敵がいないので、われわれは無力で抵抗できない市民に攻撃の矛先を向けたのだ。自分たちの行為に対し責任を持たなくていいことも知っていた。われわれは恐怖でいっぱいで、眠りを奪われていて、カフェインやアドレナリンやテストステロンで興奮していた。

上官はいつもわれわれにイラク人は全員敵だ、民間人もだと言っていた。だから、盗みたくなるし、殴ったってどうってことないし、気楽に殺せる。われわれはイラクにいるアメリカ人だ。なんでもやりたい放題できた。

洗脳状態下にあったといってもいいだろう。ここまでくると軍隊は、ある種の宗教のようにみえてくる。「イラク戦争は、現地でいろいろと問題を起こしたアメリカ軍が悪いんだ!」というのはかんたんだが、現場の兵士たちがこういう状態だったとおもうと、振り上げたこぶしをどこに下ろしていいかわからなくなる。イラクへの攻撃を決断した大統領に向ければいいのか?それとも、9.11を起こしたアルカイダに向ければいいのだろうか?

 

帰国後、ジョシュアさんはPTSD(心的外傷ストレス)に苦しむことになる。いわゆるフラッシュバックや幻聴、幻覚になやまされる病だ。このPTSDに苦しんだのは、ジョシュアさんだけではない。2008年5月にアメリカ国立精神衛生研究所が発表したデータによると、イラクアフガニスタンから帰還したアメリカ兵の自殺者が、実際の戦闘での死者を上回る可能性さえあるといった。それほど多くのひとがPTSDに苦しんでいた。

イラク戦争に帰ってきた多くの兵士がPTSDに苦しんだという事実はわりと知られているだろう。だが、その兵士たちが置かれていた状況まではあまり知られていないはずだ。本書を読むことで、現代の戦争の凄惨さを感じることができるはずだ。

広告を非表示にする