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読書めも

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大きな十字架を背負った告発者たち《告発は終わらない―ミートホープ事件の真相 赤羽喜六》

告発は終わらない―ミートホープ事件の真相

告発は終わらない―ミートホープ事件の真相

 

 ミートホープ事件。いまから9年ほど前の出来事だろうか。牛ひき肉100%と表示しておきながら、豚や羊、廃棄寸前のパンや本来食べてはいけない部位を混ぜ出荷していた。また特別な機械で水を染み込ませ肉を増量する偽装や雨水で肉を解凍したりしていた食品偽装事件。

 そしてこの事件がきっかけとなり、多くの企業の不祥事が発覚した。北海道の「白い恋人」の賞味期限改ざん、三重の老舗菓子舗「赤福」による赤福餅消費期限不正表示と売れ残り品の再販売、それに続く同県内和菓子メーカーの賞味期限偽装などなど。 

 この事件を告発したのは赤羽喜六さん(と3人の仲間)。赤羽さんは60歳まである企業の役員を務め退職。その後ミートホープに常務取締役として招かれ、10年間身を粉のようにして働いた。そして、ミートホープ時代の仲間3人と共にミートホープの食品偽装について告発した。

 内部告発というと「悪いやつらを懲らしめた!よくやった!」、ぼくにはそんなふうに見える。だが、それは当事者ではないからそう見えるのだ。実際の内部告発は多くの労力を必要とするし、自分の仲間を売ったという罪の意識に苦しめられる。

 

どうしたら田中(ミートホープ社長)に偽装をやめさせることができるのか。まともな会社にできるのか。それを考えることは常務としての赤羽の本来の責任でもあった。

赤羽:「だけれど、内部改革は無理だったんだよ。次善の策は行政の介入なんだ。行政が介入して、指導してくれれば、従業員が職を失うことなく、この会社を正せる。軟着陸させるにはこれしかない。そう思ったから、告発を繰り返ししたんだよ」

 

 この言葉通り、告発する前に赤羽さんは何度も匿名で行政に立ち入り検査するよう依頼したり、農政事務所や保健所に直接赴き、ミートホープの食品偽装について訴えた。だが、どこに行ってもだれも取り合わず、相手にしてくれなかった。

 当時の心境をこう述べていた。

 

「そりゃあ、こんな肉を売っている会社を放置していていいのかという気持ちはあったから、それはある面で正義感で動いておったのは事実だよ。だけど、一方では保身だったんだ。それから、怒り。意地。憎しみだ。だって、偽装を知っていて売っていたんだからね。それで告発するんだけど、農政事務所はだめ、保健所はだめ、警察はだめ。最後にマスコミへ行ったときには、もう正義感なんか吹っ飛んでいたよ。意地と憎しみとに突き動かされておった感じだな」

 

 そんな思いを抱えながらも赤羽さんたちは告発の準備を進め、ついに朝日新聞の協力を取り付け、ミートホープの行ってきた数々の食品偽装について世間の人々に知らせることに成功する。

 本来ならば悪であるミートホープがやられておしまい、といいたいところだが、物語はここでおわらない。赤羽さんたちのその後がなんともいえない気持ちになる。

 告発仲間のひとりである工藤さんは会社経営をしていたが、ミートホープに以前勤めていたことがバレ、多くの顧客が彼の元から去り、結果的に会社をたたむことになる。また、赤羽さんは取引先から「知ってて売っていたのか?」と問い詰められ、親族からバッシングを受け、奥さんとも離婚し、地元の長野県へ移住。

 

 ミートホープが告発されたことで、数々の企業の食品偽装が明るみに出て、消費者も食品に関しての目が厳しくなった。そうした動きの一翼を担ったのは、赤羽さんたちだ。だが、そんなかれらに対して世間の目は厳しいのである。

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