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【書評】いのちの花 捨てられた犬と猫の魂を花に変えた私たちの物語 向井愛美

いのちの花~捨てられた犬と猫の魂を花に変えた私たちの物語~

いのちの花~捨てられた犬と猫の魂を花に変えた私たちの物語~

 

「161,847」

これは、2012年の全国の犬と猫の殺処分を表す数字です。この数字をきいてピンとくるでしょうか?動物を買っているひとならなにか感じることがあるかもしれませんが、少なくとも僕はピンときませんでした。

では、1日に443匹の犬や猫が殺されている、という数字ではどうでしょうか?また、1時間ごとに18匹の犬や猫が毎日殺されているとしたらどう感じるでしょうか?

こう考えると、ぼくたちが何気ない日常を生きているなかで動物たちが殺されている現実がすこしイメージできる、とおもいます。

動物たちの骨は産業廃棄物に

動物愛護センターという施設が全国各地にあります。ここでは、飼い主が持ち込んだペットを引きとったり、センターに来た動物に里親(新しい飼い主)を探したりする所です。里親が見つからず、行き場のない動物たちの殺処分も行っている。著者の向井さんは、高校2年生のときにクラスメイトたちと地元の青森県の動物愛護センターを訪れます。そこで動物が炭酸ガスによって日々殺処分されている現実に直面します。そして、殺処分が行われた後、動物たちの骨が埋葬されず、税金を使い産業廃棄物として処理されることに驚きを隠せず、動き出す。これが本書のストーリーです。

動物の骨を見て、そう感じた。殺されるとわかって生きている動物の気持ちを、人間は理解できなていないだろう。だから、こんなことが今まで続けられてきたのだ。私も人間の一人だ。

くやしい!申し訳ないことをしてきた。 

いのちの花プロジェクト

向井さんは動物の殺処分の現状を知り、すぐに学校の先生に相談をします。すると、先生から骨が肥料になるということをききつけます。それがヒントとなり、骨を土に混ぜ、花を育てるという「いのちの花プロジェクト」を仲間たちと共にスタートさせました。

骨をくだく作業はつらい

かくしてプロジェクトはスタートしましたが、さっそく向井さんたちは困難にぶつかることになります。それは骨をくだく作業。肥料にするには骨を細かくくだく必要があったのです。

最初はシャベルを使って砕こうとした。ところが、砕けるどころか割れるばかりで、まったく細かくならない。そこで、重いレンガを使うことにした。ひと振りひと振り心を込めて、骨を砕いていった。

殺処分された動物をさらに傷つけるようで、それはとてもつらい作業だった。背中に重くのしかかる責任と命の重み。「ごめんね、ごめんね」と繰り返し心の中で謝った。 

 引き継がれるプロジェクト

向井さんたちが卒業した後も、後輩たちの手によってこのプロジェクトは現在もなお続けられています。2013年には、農業クラブ全国大会で最優秀賞と文部科学大臣賞を受賞。これをきっかけに新聞やテレビの多くのメディアに取り上げられるようになります。こうして次の世代、また次の世代へとこのプロジェクトは引き継がれているのです。

感想

80ページぐらいで30分もあれば十分によむことができる内容となっています。個人的にすきだったのはこの表紙。代表の向井さんが全面に写っているわけではなく、いのちの花と向井さんの手元にピントが合っているところ。

そして、帯に女子高生っぽい手書き文字で、いのちの花プロジェクトのビジョンが書かれているところ。女子高生のきもちが伝わってくるようなこの帯もお気に入りです。

いのちのプロジェクトのすてきだなと思った点は、動物たちの死後を考えているところ。殺処分をなくすはたらきかけって色々あると思うんです。たとえば、街で「動物殺処分反対!」と呼びかけることや、ネットを使って動物殺処分の現状を伝えることも方法のひとつです。でも、このいのちのプロジェクトはすでに多くの動物たちが亡くなり、ちゃんとした埋葬をすることができない現状があり、その動物たちの魂を花というカタチに変えたところだと思っています。

著者の向井さんは、現在すでに高校を卒業し、トリマーの資格を取ることができる専門学校に通っているそうです。機会があれば、動物殺処分についてやいのちの花プロジェクトについて今思うことなどきけたらいいなぁ。

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