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読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

【#102】私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか 松本聡香

私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか ~地下鉄サリン事件から15年目の告白~

私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか ~地下鉄サリン事件から15年目の告白~

 

内容

 地下鉄サリン事件の首謀者であり、オウム真理教の創始者である麻原彰晃氏の末っ子の松本聡香さん(ペンネーム)が書いた書籍です。タイトルから自分の生まれた境遇に対して松本さんが叫び声をあげているような感覚を覚えて、読んでみることにしました。

 地下鉄サリン事件が起こったのは1995年なので、ぼくが4歳のとき。オウム真理教について知ったのは、小学生くらいだったと思います。たしか地下鉄サリン事件の加害者として指名手配犯を受けていた高橋克也氏と菊地直子氏の写真が通学路の途中にある警察署に貼りつけられていました。オウム真理教についてぼくは詳しくありませんが、当時のオウム真理教の思想について著者の松本さんはこう語っています。

現在のスピリチュアルブームや、その理論などはオウムが唱えているものにかなり似ています。オウムが最終的にもくろんでいることは、目に見える勝ち負けではありません。思想的に日本人を徐々に洗脳していき、最終的に思想で支配することなのです。

 

キリスト教も弾圧された時代がありましたが、今では世界中で認められる宗教になっています。オウムもそのような長いスパンで考えているのです

 

つまりこのままオウムが宗教的、社会的に総括されずに終わったら、2000年後には父が神だったという歴史になっているかもしれません。平然と人を殺せるような人間だった父を信仰すれば、事件当時のオウムのような危険な思想になることでしょう。それだけは防がなければなりません。 

 ふむふむ、なるほど。ちなみにオウム真理教が絶頂期だった時は、1万人を超える信者がいたそうです。現在はアレフと名前を変えて、いまもなお麻原彰晃氏の思想が受け継がれていると言われています。

感想

 読み終えて、どんよりとした重い気持ちになりました。おそらく、本全体の印象がネガティブだったからだと思います。あとがきも後味がよくない感じでした。

あとがき

私は今、心の病と闘っています。自殺未遂を繰り返したりしながら、それでもいつか治ると信じて闘っています。私は自分の心が健康だった状態を知りません。子どものころに人生が転落していくと直感してから、憂いのない日は一日もありませんでした。ー(略)ー

 

生まれた時から背負わされたものを乗り越えるのは本当に大変です。夢の中で、産声をあげて生まれていきた自分を何度も殺し、目が覚めたら生きている自分に腹が立ちます。今の私は生まれ変わることも信じてはいませんが、仮にもし今度生まれ変わることがあるなら、次は差別されることのない生き物に生まれたいと願っています。

 松本さんがオウムという十字架を生まれたときから背負って重く苦しいというのはヒシヒシと伝わってくるのですが、それだけなんです。特になんとも言えない気持ちになったのは、学校の校長から衝撃的なことを言われたシーン。

家族は私がリストカットをしたのはいじめが原因だと考えたようで、市の教育委員会にいじめ対策をおねがいしました。次女は「さとかはリストカットをしているのですよ。もしいじめが原因でさとかが死んだらどうするのですか?」と訴えかけました。すると教育委員会の話し合いに同席していた私の学校の校長先生が、私のほうを向いて言ったのです。

 

でも、さとかさんの命は一つですよね。あなたがたのお父さんは、たくさんの人を殺しましたね。あなたが死んでも仕方がないでしょう

 

私は目の前が真っ暗になりました。まるで、私自身がテロを起こして人を殺したかのような話しぶりでした。

 子になんら非はないのに、親が犯した罪で自分の人生が変わってしまう。松本さんは、このとき以外にも様々な理不尽な目にあっています。でも、共感や読者の心を動かすようなシーンは作中にありませんでした。もっと松本さんが喜びを感じた瞬間やシーンなどがあれば、もっと多くの共感をよんだ作品になったと思いますし、そこがすごくもったいないと感じました。

 ちなみに、この本を読む前に、先にオウム真理教地下鉄サリン事件について書かれた本を数冊読んだ方がより深く読めると思います(なんとなくオウムについて知っている前提で話が進んでいる印象を受けたし、第10章では教団の幹部一人一人を取り上げ、その人たちについての印象を松本さんが語っているから)。

 この本だけでは、地下鉄サリン事件のことについては全然わからなかったし、オウムの全貌もまだまだわからないことだらけなので、別のオウム関連の書籍を読もうかなぁと思います。  

オウム事件 17年目の告白

オウム事件 17年目の告白

 

オウム真理教の幹部だった上祐氏が語った著書。

オウムを生きて―元信者たちの地下鉄サリン事件から15年

オウムを生きて―元信者たちの地下鉄サリン事件から15年

 

オウム真理教の元信者たちにインタビューした一冊。 

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