読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

【#47】今ドキの若者事情がマル分かり『近頃の若者はなぜダメなのか? 原田曜平』

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)

 

 

◎内容と感想

原田曜平さんの著書、読みました。そもそも原田さんを知ったきっかけは、元々ひろゆき2ちゃんねるの創始者)さんとの対談動画をニコニコ動画でみたのがきっかけ。この対談は、原田さんが本書の出版イベントとして行われました。

 


ひろゆき × 原田曜平 - 2011年3月8日 - 近頃の若者は なぜ ダメなの

この動画も面白いです。ちなみに原田さんどう見ても団塊の世代に見えますが、ひろゆきさんと同い年ですw。2011年の対談時点でお互いが34歳ですので、今は36歳といった所でしょうか。

さて、本書の見所ですが、今の20代後半以下の世代、例えば中学生・高校生が携帯を持ち始めて何が変化したのか?という事を過去から現在までをゆっくりと紐解くように解説してあります。

タイトルは、近頃の若者はなぜダメなのか?となっていますが、原田さんからのメッセージがこの著書に込められているというよりも、現代の若者事情をていねいかつ上手に説明してあるといったような印象を僕は受けました。天空から現在の若者事情を見下ろしている感じです。

現在、中高生の方や大学生の方がこの本を読んだら、「ああ、それあるね」「分かるわー」と声を上げると思います。いくつか本書で印象的だった箇所をご紹介します。

ビジネスマンが名刺を持っているように(パソコンで自分の名刺をつくる高校生や大学生も増えていますが)今では若者も名刺機能を果たすメールアドレスやSNS内でのニックネームを持っているので、新しい人に出会うとすぐに名刺交換が始まると考えると理解しやすいかもしれません。

これは、SNSを知らない団塊の世代の人向けに原田さんがうまく説明したものです。僕らの世代は、ネットが発達して、SNSも多くの人が知っていて、SNSのアカウントをお互い交換し合う世代だと思います。特に大学生はイベントや就活などで知り合った人とすぐにfacebookアカウントを交換するのはよくある事です。それらの事を考えた時に僕ら学生はSNSという名刺のようなものを所持しており、社会人の名刺交換を擬似体験しているのだなと感じさせられます

「私が中学生の時に学校裏サイトが流行り、そこに実名を載せられ、悪口を書かれる子が続出しました。『あの子は彼氏をとっかいひっかえしている』と書かれるなど、恋愛の妬みに近い内容が多かったと思います。

 

事実無根であっても、やはり匿名の世界なので言い訳する機会がありませんし、違う学校の人にも知られてしまうので、書かれた方が負けという状況でした。だからそれ以降なるべく目立たないように行動する人が増えました」

これは、原田さんがある女子高生にインタビューをした時にその女子高生が話した内容です。この箇所の面白さは、「匿名の世界なので言い訳する機会がありませんし」。ネットの世界って防衛できる術がないよなあって改めて思います。ホリエモンこと堀江さんが逮捕された時も「堀江さんが脱税した!」「インサイダー取引をした!」という事実と異なる情報がメディアと通じて国民に流れました。

堀江さんがある対談で言っていたのですが、あの時twitterなど自分が直接世の中に発信できるツールがあれば少し状況が変わったんじゃないかとおっしゃっていました。今でこそ、twitterfacebookのようなSNSがあるので、事実無根な事をネット上で書かれても弁解できますが、やはりネットの世界では書かれたら不利になると言う事はあるのかもしれません

海外経験ゼロなのに「ハワイはつまらない」となげく福島の青年。

かつてに比べ、中学や高校の修学旅行で海外旅行を経験してしまう人も多く、だから成人になるまで海外に行きたくても行けなかった上の世代に比べ、海外への憧れや目新しさが幼い頃にすでに減ってしまっている若者が多い、こんな理由もあるでしょう。

 

とはいえ、私の若者へのヒアリングから見えてきたのは、新村社会に生じた「既視感」によって、日常とは違う世界を知りたいと思う意欲と動機が削がれてしまっている彼らの姿です。この「既視感」を説明するために私が取材した福島の日雇い労働者の男性(20歳)の例えをご紹介します。

 

彼は、自分の彼女が「ハワイに連れて行って」とせがむのに対し、「ハワイは日本人ばかりで日本にいるのと変わらなくてつまらないよ」と言っていました。彼に海外経験がない事がわかっているのに、「どうしてそう思うの?ハワイに行ったことはあるの?」と、ちょっと意地悪だと思いながら聞いてみると、彼は自信ありげに「情報は持っています」と答えました。彼はケータイで知らない他人のハワイに関するブログを読み、「ハワイは面白くない」「日本と変わらない」などの書き込みを見て、ハワイに魅力がない事を確信したのだそうです。マスコミ情報よりも素人の情報のほうが、彼にはリアリティがあるのかもしれません。

 

岐阜の女子高生も、海外に行った事がないのに「タイは怖い」とおびえていました。退屈擬似体験、恐怖の擬似体験・・・これがまさに既視感の正体です。福島の彼は、ハワイに行く前にすでに、なんとなくハワイがわかったような気になり、実際に行ってみたいという欲求が削がれてしまっているのです。

この既視感のお話、非常に自分の事のように感じました。僕自身もちょっと情報を得てさもその事をすべて知ったかのように説明したりする事があるからです。おそらくこれは、誰もが「情報」をネットを通じて手軽に得る事ができるようになったからだと思います。だからこそ情報を得たら、その情報が本当かどうかを確かめる術を考えたり、その場所に行ってみたりする事が大事なんだと思います。

大人達が「若者はネットばかり見ている」と眉をしかめたところで、彼らの内容は、いろいろな情報をネットから摂取している子は一部にしかすぎず、いくつかの検索結果や、せいぜいSNSニュースにある恋愛ネタや芸能ネタを見ている程度なんです。大人達が若者に言うべき言葉は「もっとちゃんとネットを見ろ!」ということなのかもしれません

メディアリテラシーと呼ばれる言葉が一時流行ましたが、まさにこのことかと。メディアリテラシーではなく、既視感の方が僕はしっくりきますし、理解しやすいです。ちょっとネットで調べただけで知った気になるのは決していい状態ではありません。

世の中で言われる「格差」とはこれまでは「賃金格差」だけを意味していましたが、新村社会とともに出現した「ネットワーク格差」によって、人生の勝ち負けが論じられる時代になっていくと思います。

これも非常におもしろい見方です。ネットやSNSが発達する事で誰もが情報を得る事ができ、発信する事ができる事になったおかげで、どんな人にでも会いにいける事ができるようになった。だからこそそういったネットやSNSを使いこなせない人達はネットワーク作りに苦労するのかもしれません。

ここからは動画の一部ですが、原田さんはこうおっしゃっています。

ネットが発達してみんなが有名人のようになってしまった。だからある高校生は渋谷に行く事を恐れている。なぜなら渋谷に行くと友人とばったり会ってしまう可能性があるから。

 

友人に会うとSNSなどを通じて「あいつがいた」と言われるとめんどうであると。また恋愛においては、束縛が増えたと言われています。これは、例えば彼女からのデートを断った彼氏がいるとしましょう。ですが、彼氏は友人と遊んでいた事をSNSを通じて彼女が知り、それを激怒するなんてことがあったそうです。

特に最後のSNSを通じて相手の行動を怒るということは「あるあるだなあ」というな感じです。僕の友人で、彼女のメールを返さず、mixiをしていたら彼女から「mixiログインしてるのに、なんでメール返さないの!」というメールがきたらしいですw。

結局その友人は彼女と別れたそうですが、まさに一般人も有名人のように可視化される時代になってしまったのだなあと改めて思いました。