読書めも

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「責任を取る」っていったいどういうこと?先生、教えて!《プロジェクトの失敗はだれのせい? 細川義洋》

もはや馴染みのある言葉となったセンテンススプリング。2016年の年明けから週刊文春は次々とスクープをたたきだした。ベッキーの不倫騒動、SMAPの解散報道、清原の薬物事件、衆議院議員宮崎氏の不倫疑惑、巨人軍の野球賭博...

そして、昨日新たなスクープが飛びこんできた。現・東京都知事の舛添要一氏の政治資金規正法違反の重大疑惑だ。先日、高学出張費問題及び公用車問題でマスコミを賑わしただけに、舛添氏の進退が気になるところである。

政治家の人が不祥事を起こすと「責任を取って辞任します」とよく言うが、『責任を取る』とはいったいどういうことなのだろうか?その任を降りることなのか、それとも給料を減棒することなのか、あえて続投し名誉挽回を図ることが責任を取ることなのか。舛添さんがどのような釈明をするか気になるところである。

 

ところで、野球経験者ならば共感してくれると思うが、エラーをしたときの心の内は仲間への申し訳なさと自分への悔しさであふれている。自分のエラーで勝敗を決したことがわかったときにはチームメイトからの冷たい目線が突き刺さる。

「野球は9人全員で行うものだ!」「全員野球だから、エラーもみんなの責任」とよく言うがそんなのは建前だ。エラーした者に対する仕打ちは精神的に厳しいものである。なぜなら、エラーとはわかりやすい失敗であり、責任の所在がはっきりしているからだ。

とはいえ、目に見えないエラーもある。いや、目に見えにくい失敗と言ったほうが正しいか。たとえば、打者がボール球に手をだすこと、投手がフォアボールを連発して守ってる側のリズムが狂うことなどなど。こういった見落としやすい小さいミスが勝負を決することもある。

つまり、だれが見てもわかるような失敗に目を向けるだけでなく(もちろんこれは必須なんだけど)、見落としやすいミスにも目を向けることが大事で、それがよりよい方向に向かっていくのだと思う。

前置きが長くなってしまったが、『プロジェクトの失敗はだれのせい?』を読んだ。

 

プロジェクトの失敗はだれのせい? ~紛争解決特別法務室“トッポ―

プロジェクトの失敗はだれのせい? ~紛争解決特別法務室“トッポ―"中林麻衣の事件簿

 

 

本書は、IT関連プロジェクトで起こる問題や訴訟などを小説化したものだ。納期したものにバグが起こったり、当初の取り決めでは搭載する予定のなかったシステムの追加を何度も依頼されたり、などシステムエンジニアプログラマーあるあるの話がでてくる。ITの訴訟というとなんだかむずかしそうに聞こえるが、本書は物語風に書かれているのでITに関して素人のひとが読んでも苦にならないだろう。

 

あらすじはこうだ。

 

売上高数兆円を誇るRMKジャパンで働く中林麻衣は金融システム開発事業部でシステムエンジニアをしていた。ところが、ある日とつぜん"特別法務部"・通称トッポーとよばれる部署に異動することになった。

いったいなぜ麻衣はトッポーに異動することになったのか?上司である野々村は一日の大半を居眠りするか、雑誌やパソコンを眺めて過ごしている。すっかりキャリアパスが見えなくなった麻衣はおおきく落胆する。

しかし、突然RMKを相手取った裁判を中小企業から次々と起こされるようになる。そこにはひとりの男に姿が見え隠れしており……

 

全部で9章あり、各章ごとで話は完結している。巻末にはエピローグに加え、各章ごとの解説が書かれている。ITの仕事に関わるひと、法学部の学生は手にとってみるといいのではないだろうか。