読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

アウシュヴィッツを脱獄したポーランド人《アウシュヴィッツを志願した男 小林公二》

以前、『私はガス室の「特殊任務」をしていた』という本を読んだ。

 

私はガス室の「特殊任務」をしていた

私はガス室の「特殊任務」をしていた

 

 

これはアウシュヴィッツ収容所で、特別労務班という仕事に就いたユダヤ人の体験談だ。特別労務班、ドイツ語でゾンダーコマンドと呼ばれていた。この仕事はガス室で殺された収容者の死体処理だ。

じぶんの目の前で同胞が次々と殺され、その死体の処理をする。想像するだけで恐ろしい。この仕事は身体だけでなく、精神をも蝕むものだったのは間違いないだろう。

全体的に暗く悲惨な話がほとんどで、アウシュヴィッツには絶望しかなかったのかと思わされた。しかし、今回読んだ本はすこし違った。

 

 

アウシュヴィッツを志願した男』を読んだ。本書の主人公はポーランド人のヴィトルト・ピレツキ。おそらく聞き覚えがない名前だろう。

アウシュヴィッツに自ら志願し脱獄した男といえば、みなさんは興味をもってくれるだろうか。ピレツキは1940年9月21日にアウシュヴィッツ収容所(第一)に自ら潜入し、あげくに948日後に脱走するという荒技をやってのけた。

彼の残した『ヴィトルトの報告』は、アウシュヴィッツでの生活の様子が手に取るようにわかり、この報告書はポーランドにて現存されている。

アウシュヴィッツではオーケストラが開催され、楽器を弾ける収容者は優遇され、あたたかい食事も提供された話や収容所内では家族に送金も認められていたこと、また収容所内には売店があり、タバコ、マスタード、ピクルスなどが買うことができたことなどが記されている。彼の報告書により、収容所の内部がこれまで世界に明らかにされている以上にさまざまな相貌を併せ持っていたことが分かる。

こうしてピレツキは報告書を作り上げ、収容所内部の出来事を祖国に知らせ、多くの同胞を救った。まさに英雄ともいえるピレツキの最後は国家反逆罪に問われ、祖国の手で抹殺されてしまう。

いったい彼はなぜ殺されてしまったのか。国家反逆罪に問われるようなこととはいったいなんだったのか。アウシュヴィッツでの948日間はどのような生活だったのか。

ホロコーストに関心があるひとはぜひとも買いの一冊だ。

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1.脱走者は300人

最終的に収容所が閉鎖されるまでに802人の収容所が脱走を試みた。男性は757人、女性は45人。その内訳は、ポーランド人が396人、ロシア人179人、ユダヤ人115人、ロマ・シンティ38人、ドイツ人31人、チェコ人23人などで、そのうち約300人が成功したとされる

 

・『逃亡者ーもっとも勇敢な男たちのアウシュヴィッツ脱走』

・『ポーランドを生きるーヤルゼルスキ回想録』

ワルシャワアーセナル作戦