AVに出たら1週間後に友達にバレて、職員会議までひらかれちゃった話《高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職 紗倉まな》
以前、AV女優9名にインタビューした『名前のない女たち』を読んだ。「なぜAV女優になったのか?」という質問からはじまり、実際の撮影現場の話だったり、恋愛の話、家族の話、そんなことを掘り下げていく本だった。
わりと重めの本で、読み終えたあとに息苦しさだけが残ったのをよく覚えている。
現役AV女優の紗倉まなさんが書いたエッセイ『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』を読んだ。
本書は、『名前のない女たち』に比べると、そんな重々しさは感じなかった。やわらかいフォントに、ゆるい文体。文字数もそんなに多くないし、100ページほどの文量だから30分もあればラクに読めるだろう。
紗倉さんがAV女優としてデビューしたのは18歳のときだ。工業系の学校である高専(高等専門学校)に通っているときのことだった。生徒の9割が男子で、ロボコンの部活が有名な5年制の学校。
そんな高専に通っていた紗倉さんだが、ごく普通の学生だったという。授業が終わるとすぐ女子寮に帰ってレポートに取り組み、「微分、積分、いい気分」が口癖。バイト、レポート三昧の青春だった。
アダルトビデオに出演して、インタビューを受けるようになってから、「そんな環境なら、高専時代の同級生全員制覇とかでもよかったんじゃない?」なんて聞かれたりするのですが(なんてことを!とんでもない!)、そんな考えは全く浮かんできませんでした。
その頃の私は、もちろん「性」に対しての興味はあったけど、ただ「セックスをしたい」という欲望ではなく、「裸になって自分を表現したい、プロとして仕事したい」という気持ちの方が強かったんです。
自分がセックスをして快楽にふけるというのとはまた別物だったし、いまいちセックスという行為がわかっていなかったのだと思います。
AV女優の道を選択するうえで、ぜったいに避けて通れないのは親バレ、友達バレだ。親や友達、学校などにバレて引退する女優も少なくない。紗倉さんの場合、どちらも経験している。
母に対しては自分の口で伝えることにした。AV女優になると決めたあとすぐに話したという。泣いて止められたりしたのかなぁと思っていたのだけど、紗倉さんの母は違った。
母「あなたはいつもハチャメチャなことばかり言って...え、てことは結局...橋は作らないの?」
紗倉さん「作れたら作る」
母「はあ...」
(中略)
話し合いは、母親の「よくわからない子ね」という言葉と一緒に、涙も怒声もなく、静かに幕を閉じました(白目)。
しかも、今では紗倉さんの作品や雑誌のグラビアなどもチェックし「このメイクは変なんじゃない?」「演技下手!」などアドバイスや感想をくれるすげー母さんだ。
さて、友達バレの方だが、自身の作品が出た翌週にさっそくバレたという。さすが高専。まあ全校生徒の9割が男子だったら、そりゃバレるか。
しかも、直接男子から聞かれたという。聞いた男子すげえ...
「あのさ、工場萌え日記だっけ?ブログに製図のせてたでしょ」
「ぎくっ... ...(汗)」
「あっちでも測量してたね」
「ぎくっぎくっ... ...(汗)」
そして、その話は先生の耳にも飛び、職員会議にかけられ「やってるやってない」の議論になったという。紗倉さんはというと、なにも知らないふりをつづけるという強硬手段をとり、無事卒業できたというオチだ。
そのときの心境をこう語っている。
意外にも、男子が多いという学校の環境に救われたのかもしれません。男子の、直球で質問をしてくる部分は、嫉妬や妬みで相手を引きずり落とそうとする女子の言葉よりも傷付くことが少なかったように思えるからです。
「学校にバレるくらい有名になれたんだからいいや」なんていう強気な部分が盾となり、からかわれたり批判されることも気にせずに過ごせました。あのときは今以上に、心が強かったな。しみじみと。
「学校にバレるくらい有名になれたんだからいいや」ってすげぇと思うのだけど、それくらい強いハートがないと売れっ子女優としてやっていくのがきっと難しいのだろう。本書には、ところどころAV女優に対する紗倉さんの真摯な思いが書かれているので、そこも見どころだ。
個人的には、恋愛の話が興味深かった。AV女優の恋愛となると、やっぱり業界のひととの恋愛が多いのかなぁと思っていたのだけど、どうやら紗倉さんは悩みがひとつあるらしい。
恋愛に関しても同じ悩みがあります。例えば、新しい出会いがあったとしますよね。絶対に職業の話になるわけです(聞かないでくれ頼む〜)。ここで「AV女優をしてるんだよね」なんて言ったら、AV女優だからという前提付きで、「付き合ってみたい」とか「Hしてみたい」とか短絡的思考に陥られるんです。
これがもう、心〜〜〜底不快で... ...。ううん、致し方ないことかもしれませんが。勝手に「股ユル女子」に認定されることも多くて、心外だったりします。
AV女優という職業に誇りを持っていたとしても、世間から見れば「プライベートでも誰とでも簡単に寝る」なんていうネガティブなイメージが付きまとっていることは否めないんですよね。プライベートでのセックスの充実度なんて人によりけりなんですけどね... ...。そこまでの理解に達していないのが現実なんです。
まあこれは紗倉さんたちに限らず、芸能人のひとたちも同じなのかなぁと思ったりもした。紗倉さんの場合は「AV女優」として見られ、芸能人のひとならば「芸能人」というフィルターを通して見られるわけだかは、一般のひととの恋愛はむずかしいのかもしれない。そうなると、必然的に同じ業界内での恋愛になってしまうのは無理もない。
そもそも紗倉さんのような売れっ子の女優さんと結婚した一般人のひとっているのだろうか。結婚したひとがいたとするなら、どこで出会ったのか聞きたくなるんだけど...あ、ぼくだけですか。
以前読んだ『AV男優の流儀』や『光輝くクズでありたい』にくらべると、ディープな下ネタがそんなにないので、下ネタが苦手なひともたぶん大丈夫。
最近、紗倉さんが小説を出したらしいので、今度はそっちを読んでみようかなぁ。