【#205】野村監督のボヤきに隠されたひみつ《プロ野球監督 拝啓オーナー殿こうすれば勝てるのです 近藤唯之》
2016年度のプロ野球に新しい風が吹くのはまちがいないだろう。巨人では高橋由伸、阪神に金本知憲、横浜DeNAはアレックス・ラミレスが監督に就任したからだ。
高橋は40歳、ラミレスは41歳、金本は47歳。若き指揮官たちがどのような戦いをするのか。どういったチーム作りをするのかきになるところである。
ところで、プロ野球において監督という役割は非常に大事だ。監督のカラーがチームに表れるといったほうが正しいだろうか。
ミスターこと長嶋茂雄は、144試合すべて勝つために、レギュラー陣に休養日を与えなかった。
「権藤、権藤、雨、権藤」と呼ばれた権藤博は、じぶんを監督と呼ぶのを禁止し、「権藤さん」と呼ばせ、チームをフラットな組織にした。
企業の社長が代わると、その企業の雰囲気や戦略が変わるのとおなじで、プロ野球の監督も変わるとその球団がガラッと変わる(もちろん変わらないことも)
本書は、プロ野球の監督25人を取り上げ監督たちを比較したものだ。王貞治、長嶋茂雄、星野仙一、野村克也、森祇晶、権藤博、仰木彬、三原脩、水原茂、川上哲治、達川光男などなど、野球界のレジェンドたちが登場し、かれらの知られざるエピソードがここでたくさん紹介されている。
自分を「監督」と呼ばせなかった権藤の狙い
平成10年、横浜の選手全員に向かって、「オレを監督とか、監督さんなんて呼ぶなよ。ただの"権藤さん"でいいんだ。あと1年か2年過ぎてみたら、オレは横浜の監督ではなく、ただのオッサンになっているかもしれんしな。男の人生にはなんの保証も見通しもないんだ。もしこの約束を破ったら、罰金は1回につき1000円払ってもらう。ただし、この罰金はオレのふところには入らない。チームでプールしておいて納会かなんかのビール代になる。」これは冗談や笑い話ではない。現実に一番多く罰金を払ったのは谷繁元信捕手で、3000円である。つまり、権藤と谷繁は試合中でも練習中でも、いつでも投手リード理論について、休むことなく話し合っている証明だと思う。
名監督・水原茂が、三塁コーチボックスに立つ理由
水原はどこの球場へ行っても、三塁コーチボックスへ立つ。「二塁走者か一塁走者が三塁へ走ってくる。その走者を三塁で止めるのか、本塁へ突入させるのか、その判断は直接、勝敗に結びつく。だから、その判断は最高責任者の私がやる。指揮官としては当然だろう」これが水原の考え方である。
野村のボヤきはただのボヤきではない
野村はダグアウトのなかで独り言を延々と続ける。攻撃中でも守備についているときでも、この独り言は続く。独り言といっても、野村の場合は単なる独り言ではない。ある場面では技術論、またある場面では精神論と、内容を意識的に変えてくる。しゃべることで周りにいるコーチ、選手たちにそれとなく教育しているのだ。
あなたは、どの監督の考え方に共感を示すだろうか。登場する監督たちがわりとふるいひとたちなので、野球ファンでもわりとコアなファン向けの本となっている。もし、あなたが生粋の野球ファンです!といえるほどなら、この本に挑戦してみてもいいかもしれない。