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【#200】名古屋で寝たきりの社長やってます《働く、ということー十九歳で社長になった重度障がい者の物語ー 佐藤仙務》

働く、ということ ―十九歳で社長になった重度障がい者の物語―

働く、ということ ―十九歳で社長になった重度障がい者の物語―

 

<脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)>

 

あなたはこの障がいを知っているだろうか。10万人に1人と言われている難病であり、その治療法はいまだに見つかっていない。

本書の著者である佐藤仙務さんは、1歳のときに脊髄性筋萎縮症と診断され、以来ほぼ寝たきりの生活をおくっている。この難病は、脊髄から筋肉を動かす神経に問題があり、命令がスムーズに伝達されない。そのため筋肉が動かず、萎縮してしまう。

佐藤さんが自力でできることは「話す」こと、「左手の親指が数ミリ、右手の親指が数センチ動く」ことだ。症状はまるでALSのようだ。

 

 

本書は「障がい」をテーマにしたドキュメンタリーではない。19歳でじぶんの会社を立ち上げることになったひとりの男性が働き、感じたことや実際に起きた出来事をつづった本である。つまり、「働く、ということ」がテーマなのだ。

だから、ドキュメンタリー特有の悲壮感や現実味を帯びた仕上がりになってはいない。むしろ読んでいて、元気をもらえる。

 

佐藤さんは、19歳のときにWebサイト製作の会社である「仙拓」を立ち上げる。起業するにあたって、小学校の3学年上の先輩で、同じ障がいをもつ松元拓也さんを誘った。会社名の「仙拓」は、佐藤さんの名前と松元さんの名前をひとつずつとって名付けた。

この松元さんが佐藤さんとは正反対の性格で、たびたび佐藤さんと仕事のことで衝突する。

 

僕の性格は自分で分析すると、「せっかち」「猪突猛進」「まず行動する」という感じだ。それに対して松元は、「まず考える」「なかなか動かない」「マイペース」である。こんな2人が1つの仕事に取り組むわけだから衝突しないほうがおかしい。

 

佐藤さんは性格の通り「営業」、松元さんはウェブデザインを担当する。基本的には、佐藤さんが仕事をとってきて、松元さんがサイトをつくる、という流れだ。

この役割分担がすごくいい。本書にもたびたび出てくるのだけど、佐藤さんはフットワークが軽い。中日新聞社に連絡をとり、じぶんたちを取材してもらうための段取りをとったり、次々と仕事を受注してくる。そして、なによりも障がい者が当たり前のように働けるような世の中にしたいという明確なビジョンをもっている。社長に適していると思う。

一方、松元さんはWebデザインのスキルを駆使する職人さんといった感じだ。ひとりでしこしこと仕事をするタイプで、現実主義ですこしドライな感じだ。起業するまえに、今後の進路について佐藤さんと松元さんでスカイプをしたときにこんなことがあった。

 

ぼくは松元に実習がうまくいかず、今後の進路が決まっていないことを愚痴った。「障がい者でも働く場所が欲しいよ」

すると、松元は「残念だが、そんな場所ねぇよ」と答えた。僕にはその言葉が重く響いた。(中略)

「そんなだからニート障がい者なんだよ」僕が反発すると、彼は言い返してきた。

「お前も、すぐそうなるだろ」

「だけど、僕はそうなりたくないんだ」

障がい者なんてそんなもんだろ」松元は冷めきった口調で言う。

 

ふたりはしょっちゅうぶつかり合い解散の危機も何度もあったようだが、ちがうタイプのふたりだからこそ、なんとかやってこれたのだと思う。

ずっとふたりでなんとか切り盛りしてきたが、2014年に大阪の大学院卒の男性、宗本さんを3人目のメンバーとして迎えることになる。宗本さんもまた筋ジストロフィーという難病をかかえている。そして、同じ年にもうひとりのメンバーを追加し、仙拓はすこしづつ大きくなっていこうとしている。

と、まあそのあたりのことは続編の「寝たきりだけど社長やってます」のほうに書かれているのだろう。今週か来週あたりに読めたらいいかなぁ。

寝たきりだけど社長やってます

寝たきりだけど社長やってます

 

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