文章が上手になるたったひとつの方法《9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言》
9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言
- 作者: ジム・ドワイヤー,ケヴィン・フリン,三川基好
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/09/13
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
人間が落ちていく。1機目が激突してからツインタワーが崩壊するまでの102分。126人の死者を含む、ビル内にいた352人の証言でいま初めて明かされる、大災害真っただ中の超高層ビル内で起きた混乱と助け合い、悲劇と幸運、そして生と死の分かれ道。
感想
以前、文章術に関する記事をよんだ。上記によると、文章を書くということは、ゼロを1にする作業ではないらしい。いったいどういうことなのか。
文章を書くという仕事は、ゼロを1にする作業だと思われがちだ。
小説や脚本、ゲームシナリオなどの創造的な文章ならなおさらだ。しかし実際には、文章を書くというのは100を1にする作業だ。(中略)
『狼と香辛料』を書くにあたり、著者の支倉凍砂はかなりの量の文献を読み込んでいたらしい。ライトノベルは、青少年向けの「軽い小説」と見なされることが多い。しかし、そのライトノベルでさえ、メガヒットの裏側にはきちんとした情報収集があった。
http://matome.naver.jp/odai/2135492510323480701また『希望の国のエクソダス』を書くにあたり、著者の村上龍は綿密な取材を行った。その様子は「取材ノート」としてまとめられて、出版されている。たった一本の小説を書くために、著者は目眩がするほど膨大なインプットを行っていた。
目からうろこだった。いや、少しおおげさか。でも、それくらい驚いた。なぜなら、ぼくも文章を書くということは、ゼロを1にする作業だとおもっていたからだ。自分の内面にあるもの引っ張りだしてきて、それをどう読み手にとどけるか。それがすべてだとおもっていた。
だが、どうやら違うらしい。まず100の情報を集め、それを1に集約すること。それが文章を書くということなのだ。料理はいきなり包丁を研いだり、鍋に火をかけてもつくることはできない。食材がなければ、料理ははじまらない。まずは、食材を買いにいくことが大事なわけだ。この料理の食材にあたる部分が、情報や知識に当てはまるのだろう。
そういう意味で本書は、100の情報を1に集約している。二百回以上におよぶ生存者やその家族・知人へのインタビュー、警察や消防の交信記録、電話の会話の記録などに基づいて構成されている。
だからこそ、登場人物が多い。350人以上のひとが登場する。つまり、350人ひとりひとりが見た9.11を読み手が疑似体験できる。ワールドトレードセンター(WTC)のてっぺんにあるレストランで働いていたウェイトレス、救出するために命がけでWTCに突入した消防士、空から人々を救出しようとした救助隊、もう自分は助からないと悟り、妻に電話する男性。ほんとうに色々なひとが登場する。
あのとき、WTCの内外ではなにが起きていたのか。それをあますことなく書いている。本書は、14章から成り立っている。ぼくが気に入っているのは、それぞれの章ごとの見出しだ。
1章.爆弾だ!逃げろ!
2章.今日のトップニュースだ
3章.ママ、おしゃべりしたくて電話したんじゃないんだよ
4章.上の階との連絡手段が確保できていません
5章.ここにいたほうがいいんだろうか、それとも避難するべき?
6章.ドアから離れろ!
7章.事情が許すなら、あわてずに避難を始めてください
8章.こっちには行けないよ
9章.屋上に出るドアに鍵がかかっている
10章.わしはまだまだ元気いっぱいだ
11章.ぼくは友達のそばにいることにするよ
12章.今の話を長官にもしてくれ
13章.すぐに降りていくよ
14章.わからないのか、この建物は今にも崩れるんだぞ
ひとつひとつの見出しが、その章でどんな話が書かれているのかイメージすることができる。2章は、きっと新聞記者が主人公の章だろうし、3章は、もう助からないと思い母親に電話をしたひとが登場するだろうし、10章は、だれかがじーさんに手を貸そうとしたところ、そんな助けはいらんと一括したじーさんが出てくるんだろう。
たった一文なんだけど、あれこれとイメージさせられる。100の情報を上手に1に集約している証拠だろう。380ページもあるので、数日にわけてよむことをオススメする。
9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言
- 作者: ジム・ドワイヤー,ケヴィン・フリン,三川基好
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