ぼくが死ぬまでに読みたい本《ぼくの生きかた 島田紳助》
内容(「BOOK」データベースより)
「えせ田舎暮らし」その後、仕事の環境の整えかた、友だちとのつきあいかた、夫婦のありかた、子育て、新しい価値観、これからの夢…。島田紳助・四十五歳のすべて。
感想
死ぬまでに、どうしても読みたい本がある。それはまだ発売どころか、発売される予定もあるかどうかわからない本。だから、まぼろしの本といってもいいかもしれない。でも、本のタイトルは、ぼんやりとイメージできているし、出版社も勝手に決めている。そんなことを妄想するくらい読みたいとおもっている。
イチロー。野球選手のなかでいちばんすきな選手だ。バットをもったまま弧を描くように腕を一回転させるしぐさを、野球少年は皆いちどはやったことがあるはずだ。走攻守3拍子そろい、メジャーであれだけ活躍できる選手は、ぼくが生きている間にもうでてこないだろう。
そんな彼を何十年と支えてきたひとりの女性がいる。イチローの妻、弓子さん。彼女がいなかったら、イチローが打ち立てたメジャーリーグの数々の大記録は生まれなかっただろう。そんな弓子さんの存在をある番組でこう語っていた。
僕よりずっとストレスがあるでしょうね。毎年シーズンが終わったときにそれは思います。最後の日に、「おわったー!」ってやってるんですよ。僕じゃないんですよ、僕が「おわったー!」ってやってるなら分かるじゃないですか。でも、弓子が「おわったー!明日からなにもやることないー!」ってやってるんですよ。
それ見たら、このひとすごいなぁと思いましたね。このひとのここがすごいっていうのはいくらでもあったりするんですけど、それがぜんぶを表しているんじゃないかなあと思いますけどね。
イチロー以上に弓子さんが大きなものを抱えてシーズン中を過ごしているエピソードだ。そんな弓子さんは、イチローをどう支えたのか、どう見守ったのか。イチローに最も近しい存在である弓子さんしか知り得ないエピソードがきっとたくさんあるだろう。自分がだいすきな選手を、その選手の最も近しい人物は、どう感じているのか、どうおもっているのか。それをすごく知りたい。
だから、彼女直筆のイチローについてかかれたエッセイ本を読みたい。タイトルは、「見守るちから」「支えるちから」そんなところだろうか。
◆
本書はぼくのすきな芸人、島田紳助さんのやさしいタッチのエッセイ本。本書を読み終えたとき、上記にかいた思いがむくむくと甦ってきた。というのも、本書の第4章に紳助さんが奥さんの存在についてこう書いていたからだ。
ぼくの嫁さんは、ぼくの理想の「嫁」を演じてくれていたように思う。(中略)
二十代で、ぼくは女性関係のトラブルを起こした。それは大きく報道されそうになった。「もうあかんわ。もう、やめなあかん」ぼくが電話で嫁に言うと、彼女はその女性とのことを怒るよりも前に、からからっと、こう言ったのだった。
「まあ、いいやんか。誰も怒らへんよ。自分で積み上げたもんを自分でつぶして、誰に文句言われることもないやんか。お父さんの会社継いでつぶしたんやったら怒られるけど、自分一人で積み上げてきたものを自分でつぶして怒るひとは誰もいてへんし、怒られる必要もないやん」
それは平和のときではない。そんな有事のときにそういう言葉を吐く嫁に、ぼくは感動した。
そういえば、紳助さんの奥さんは、紳助さんのことをどうおもっているのだろう。そんなことをぼんやりと考えた。
以前紳助さんがテレビにでていたときは、奥さんの話をよくしていた。浮気で離婚話が何回もでただの、携帯を折られただの、モメてちゃぶ台をひっくり返しただの。でも、それらは紳助さんの口から聞いただけで、奥さんが紳助さんのことをどうおもっているのか、まったくわからない。だからこそ、すごくきになる。なんで離婚しなかったのか、とか。
まあ、紳助さんは引退したから奥さんの本は出版されないだろうけど、イチローの奥さん弓子さんの本はでるんじゃないかなあとおもっている(すでに出版社のひとが本の打診をしたとおもうけど)。だが、それは先の話だ。おそらくイチローが引退してからじゃないかな。それも、イチロー直筆の本が発売されてからだとおもう。
実は、イチロー関連の本はたくさん発売されているが、イチロー直筆の本というのはまだこの世にでていない。だから、それがもし発売されたら、出版社も弓子さんのほうに話をもっていくんじゃないかなとおもう。それをすごくたのしみにしている。