知っていますか?年間4000の犬が殺されていることを。《犬たちをおくる日ーこの命、灰になるために生まれてきたんじゃない 今西乃子》
犬たちをおくる日―この命、灰になるために生まれてきたんじゃない (ノンフィクション 知られざる世界)
- 作者: 今西乃子,浜田一男
- 出版社/メーカー: 金の星社
- 発売日: 2009/07/01
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
捨てられる命を一頭でも減らす社会へ―。日本一の動物愛護センターを目指して、日々、奮闘する愛媛県動物愛護センター職員たちの日常を追いながら、命の尊さを考えるノンフィクション。
感想
サブタイトルの『この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』が胸に響く。本書の主人公である動物愛護センターのひとたちの悲痛なメッセージのような感じがするからだ。
本書の舞台は、愛媛県動物愛護センター。ここには、1年間で4000頭ものの犬が持ち込まれ、処分される。しかも処分する費用は、すべて税金で賄われている。収容犬と収容ねこのえさ代が年間180万、処分後の死体を焼却する焼却燃料に、年間300万円以上もの税金が投入されている。建物や機械をつくるにあたっては、数億円以上かかっている。
そんな動物愛護センターではたらく職員のひとたちにスポットライトを当てて、動物殺処分の現状、センターで起こる日常が書かれている。
児童書だから、漢字にふりがながついているんだけど、それが本書が扱うテーマの重さを軽減している。ひらがなが多くみられるぶん、やわらかさが出ているのだ。だから、読んでいて重々しい感じはしない。
第4章の『命のイス取りゲーム』と題されたタイトルがいちばん印象にのこっている。命のイス取りゲームとは、動物愛護センターが主催する譲渡会でえらばれる動物たちの状況のことを表現している。
譲渡会とは、月に一度開催されており、センターが保護した一部の動物を一般の人々に譲っているイベントだ。だが、保護された動物全員が一般の人々の手に渡るわけではない。譲渡用としてえらばれやすい第一条件は、健康。第二に性格が人懐こいことである。
そして、選別はすべてセンターの人間が行うことになっている。だから、譲渡用にえらばれない限り、犬たちは「死」をまぬがれる術はない。
一年間でこのセンターに持ち込まれる犬の数は、約4000頭。そのうち譲渡会に出されるのは、約10頭。なぜそんなに少ないかというと、譲渡するまえに、センターのスタッフによって訓練させなければならないからだ。このトレーニングをしっかりやっておかないと、他の犬と上手に付き合うことができず、人や犬を見るとほえたり、こわがったりするのだ。
ちなみに、殺処分の数は年々減ってはいるものの、まだまだ処分される数は多い。
参考)平成16~25年度の犬・猫の引取り状況
年度 | 犬 | 猫 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
引取り数 | 処分数 | 引取り数 | 処分数 | 引取り数 | 処分数 | ||||
返還・譲渡数 | 殺処分数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | 返還・譲渡数 | 殺処分数 | ||||
平成16年度 | 181,167 | 25,297 | 155,870 | 237,246 | 4,026 | 238,929 | 418,413 | 29,323 | 394,799 |
平成17年度 | 163,578 | 24,979 | 138,599 | 228,654 | 3,936 | 226,702 | 392,232 | 28,915 | 365,301 |
平成18年度 | 142,110 | 28,942 | 112,690 | 232,050 | 4,427 | 228,373 | 374,160 | 33,369 | 341,063 |
平成19年度 | 129,937 | 29,942 | 98,556 | 206,412 | 6,179 | 200,760 | 336,349 | 36,121 | 299,316 |
平成20年度 | 113,488 | 32,774 | 82,464 | 201,619 | 8,311 | 193,748 | 315,107 | 41,085 | 276,212 |
平成21年度 | 93,807 | 32,944 | 64,061 | 177,785 | 10,621 | 165,771 | 271,592 | 43,565 | 229,832 |
平成22年度 | 85,166 | 33,464 | 51,964 | 164,308 | 11,876 | 152,729 | 249,474 | 45,340 | 204,693 |
平成23年度 | 77,805 | 34,282 | 43,606 | 143,195 | 12,680 | 131,136 | 221,000 | 46,962 | 174,742 |
平成24年度 | 71,643 | 33,269 | 38,447 | 137,745 | 14,858 | 123,400 | 209,388 | 48,127 | 161,847 |
平成25年度 | 60,811 | 32,092 | 28,570 | 115,484 | 16,320 | 99,671 | 176,295 | 48,412 | 128,241 |
(引用)環境省自然環境局調べ
以下のことばが動物殺処分の問題をぼくたち人間に突きつけている。
しかし、救える命には限りがある。捨てるのは簡単だが、救うのは簡単ではない。捨てる人間が減らないかぎり、灰になっていく命も減りはしないのだ。
一匹でも多くの犬たちが生きれる世になれば、と願うばかりだ。
自分メモ
1.動物愛護センターは、だれかの責任追及する場じゃない
だれかの責任追及することが、この施設の目的じゃありません。その処分の実態を知っていただくことで、自分にできることは何かを、みなさんに考えていただきたいんです。そのためにこの施設を開放しています。
2.かわいいでは飼えないし、かわいそうでは救えない
犬もねこも「かわいい」という一時の感情で飼うことはできない。また「かわいそう」という感情だけでは救うことはできないのだ。
こちらは9月に新書としてあたらしく発行される予定です。