読書めも

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命をかけた動物レスキュー《おいで、一緒に行こうー福島原発20キロ圏内のペットレスキュー 森絵都》

おいで、一緒に行こう―福島原発20キロ圏内のペットレスキュー

おいで、一緒に行こう―福島原発20キロ圏内のペットレスキュー

 
おいで、一緒に行こう (文春文庫)

おいで、一緒に行こう (文春文庫)

 

あらすじ(帯より)

この取材が正しいのか正しくないのか、私にはいまだもってよくわからない。畢竟(ひっきょう)、何をもってして正しさを測るかという問題に帰着するのだろうけれど、自分の物差しをここでふりかざすつもりもない。見たくて、知りたくて、書きたくて、伝えたかった。私にあったのはそれだけだった。そこに正義の意識はなかった。同時に良心の呵責もなかった。

感想

東日本大震災の被害を受けたのはなにも人間だけではない。多くの動物たちも被害を受けた。避難所へ逃げようとしたときに、動物たちのその多くがその場に取り残された。犬、猫、牛、豚などなど。その取り残された動物たちを助ける活動をしつづけるひとたちのドキュメント。

当時、原発に関する状況がよくわかっていないなか20キロ圏内に突入し、動物たちを助けに行こうとする。かれらは、仕事で動物たちを助けているわけではない。全国から有志で集まったボランティアだ。防護服があるわけでもない。報酬があるわけでもない。やっていることは、法令違反。最初大勢いたボランティアはどんどん減り、残っているほとんどが40代の女性ばかり。

しかも20キロ圏内に入るには、検問や有刺鉄線を越えなければいけない。そんな状況でも、彼女たちは動物たちの命を救うために、なんども20キロ圏内に突入し、保護活動をつづけてきた。

いったいなぜ保護活動をつづけるのだろうか?

「最初は大勢いたボランティアがどんどん減って、今も圏内に残っているのは四十代の女ばかりって聞きましたけど」最後にこの問いを投げてみた。

「ええ、ありこも私もそうだし、四十代ばっかりです」

「なぜでしょう」

「あたしらの場合は、失うものがないんで。若かったら、もっと放射能を気にしてたかもしれないけど、もう死んだら死んだで、それはそれでいっか、みたいな。人に迷惑もかかっちゃうけど、まあ、しょうがないか、みたいなところも正直ありますね」

「でも...じゃあなぜ、四十代の男じゃなくて、女なんでしょうね」

「それはやっぱり、母性でしょう」

そして、その彼らに密着するために20キロ圏内へと同行する森さん(著者)たち。この密着取材を記事にすることは、すなわち自分たちと中山さんたちが法令違反を犯したということを認めることになる。それでも、書籍にしてかれらの活動を世にとどけたのだ。

レスキュー隊のひとたちは動物たちを助けるために。森さんたちはその活動をより多くのひとに伝えるために。やっていることは違えど、どちらも勇気をもって20キロ圏内に突入したのだ。みなさんはどうだ?かれらのように勇気をもって、なにか行動したことはあるだろうか。そんなかれらの勇気をみることができるこの本。読んで、損は決してないだろう。