読書めも

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これからの「性」についての話をしよう。いま日本で性表現の自由をさけぶ漫画家《ワイセツってなんですか? ろくなでし子》

ワイセツって何ですか? (「自称芸術家」と呼ばれた私)

ワイセツって何ですか? (「自称芸術家」と呼ばれた私)

 

感想

いま、日本で性表現の自由を表立って訴え、たたかっているのは女性は彼女しかいないでしょう。ろくでなし子さん。2014年6月にわいせつ物頒布等の疑いで逮捕され、すぐに釈放されましたが、同年12月に今度はわいせつ物陳列罪で逮捕されました。

本書は、その逮捕されたときの様子や逮捕されて留置所にいたときの様子、自身の活動のきっかけなどについて漫画で描かれています。こんなにもポップな逮捕記録があるのかっていうくらい明るい内容となっており、しかも漫画だからサクサクよめる。そもそも、逮捕され、警察署に連行されたとき、漫画のネタになるとおもってワクワクしていたろくでなし子さん。どんだけ強いハートの持ち主なんだよっていう(笑)。

ろくでなし子:あと、「恥」って本人が恥と思わないと、恥じゃなくなることにこの活動をしていて気づいたんですよね。

逮捕されることも日本では恥なんですよ。それによって、周りからすごく同情されたり、気の毒がられたんですけど、私はむしろおいしい思いをしたんです。恥じゃないと思ってるし、いいことしかないから、周りの反応にピンとこないんです。

きっと日本で過去に逮捕されたひとで、逮捕されて「おいしい!」とおもったひとなんて、ろくでなし子さんぐらいなんだろうなあ。

 

ところで、ろくでなし子さんはなぜこのような活動を始めようとおもったのか?

きっかけはノリだったといいます。あるとき、漫画家を志すようになったろくでなし子さん。ところが、デビューしても鳴かず飛ばずの毎日。なにか漫画のネタにならないか?と悪戦苦闘しながらある日、陰毛エステをググると(そもそも、なぜ陰毛エステとググろうと思ったのかw)、女性器の整形がヒット。

それを見たろくでなし子さんは「おもしろい!」と思い、即座に整形手術を決意します。身近な友人に顔の整形をしたひとがいて、顔も体も女性器もかわらないと思い、手術に抵抗はなかったという。その話を出版社に持ち込んだところ、即OK。

そしたら、当時の担当から続編を書いてほしいとの依頼が。ネタに困ったろくでなし子さんのとった行動が

「もうネタないし、美しくなったまんこの型でもとってみるかー」

かるい、かるすぎるw そして、なぜそんな発想になるのかww

ちなみにどうやって型をとったかというと、歯医者の歯の型をとるピンクの器具で型をつかったとのこと。ところが、実際にとった型がなんだか地味な感じに。そこで、その型をデコレーションにしてみることに。これがのちに自身のアート作品の土台となる。

ろくでなし子さんのいままでの作品はコチラ

 

すると、徐々にメディアがろくでなし子さんの活動について取り上げてくれることに。しかも、海外のひとには、ろくでなし子さんの作品が大ウケ。

でも、日本のひとからはたくさんのバッシングがろくでなし子さんに浴びせられる。このバッシングが怒りとなり、創作活動のバネになったといいます。ここがおもしろい。ノリではじめた活動がいつの間にか怒りが原動力となっている。

つまり、ろくでなし子さんの根底には、怒りという感情があって、それを笑いにかえてきた。アーティストという言葉を「なにかを表現するひと」とするのであれば、怒りを笑いとして表現に変えているろくでなし子さんはまさにアーティストだなあ思う(つくったものがワイセツ物に該当するかどうかはさておき)。

ワイセツってなんだろう?と考えるきっかけになる一冊でもありますが、漫画なのでよみやすい。現在も裁判はつづいているので、テレビや新聞での報道でしかろくでなし子さんのことを知らないひとは、ぜひ。

私の体がワイセツ?! ――女のそこだけなぜタブー

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こっちはろくでなし子さんのエッセイ