ニューヨークから帰ってきた不器用なサムライ《決めて断つ 黒田博樹》
3月27日、プロ野球が開幕した。野球を10年ちかくやっていたけど、特に応援している球団があったわけではないので、べつにぼくにとって特別なことではなかった。だが、それは昨年までのお話。
今年は、初めて応援したくなる球団ができた。それは、赤がチームカラーの広島カープ。なぜなら、ヤンキースに所属していた黒田博樹が広島に8年ぶりに帰ってきたから。
黒田は、メジャーで20億のオファーがあったにもかかわらず、それをけって4億の契約を広島と結び、「男気がある」「侍」「かっこいい」といわれている、時のひとだ。
そんな黒田がぼくは大好きだ。本書を読み進めていくうちに彼の魅力のひとつが分かった。それは、「不器用」であること。そして、その不器用さが多くのひとに愛されていると感じた。そんな不器用さを物語る有名なエピソードがある。
それは、黒田が2008年にメジャーリーグへの挑戦を表明し、ドジャースと契約したときの話だ。当初契約は4年だった。4年で約40億の年棒。しかし、あろうことか黒田は自ら4年契約を3年契約に減らしたのだ。
契約年数を伸ばす交渉をしたプロ野球選手は過去に何人もいる。それこそ、契約年数や年棒で球団側ともめ、他球団に移籍するというケースは少なくない。が、しかし、契約年数を減らす選手が過去にいただろうか?おそらくいないだろう。
なぜなら、契約年数を減らすということは自らの選手生命を短くするかもしれないからだ。しかも黒田の場合、1年で10億の年棒なので仮にケガをして試合に一試合も出場しなくても契約さえすれば10億円が懐にはいってくるわけで。
もちろんそれまでに十分お金をもらってるからやろ?と言われればそれまでかもしれないが、10億のお金を断れる人間はごくわずかだろう。
そんな彼がどのように生きてきたかということについて語ったこの本。きっと読み終えたあと、「不器用」、でもそこがイイ!と思わされるだろう。