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【書評】危険度100%!!深海のエベレストに挑んだオトコたちの物語「シャドウ・ダイバー」が熱い

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

 

あらすじ(amazonより)

海底に沈没した昔の客船や軍艦に潜り、冒険の証として磁器、海図、舵輪などの遺物を持ち帰るレック・ダイビング―それは血液が窒素で泡立つ減圧症、船内に閉じこめられる、潮に流されるなど、幾通りもの死に方が準備されている危険なレジャー・スポーツだ。

1991年、屈指のレック・ダイバー、チャタトンとコーラーがニュージャージー沖の海底に発見したのは、紛れもなく第二次世界大戦時のUボートだった。司令塔は外れ落ち、船体には穴が空き、大量の人骨が泥に埋もれている。

だが、どの資料を見ても、その海域ではUボートの沈没はおろか、船舶事故すら起こっていないという。歴史から忘れられた“U‐Who”に興味津々のダイバーたちは謎を解く鍵を求めて深海を目指すものの、水深70メートルの苛酷な環境下、死傷者が続出する。

また、発見したいくつかの遺物を手掛かりに、内外の海事専門家を訪ねてまわるものの、艦名すら杳として知れない。他のダイバーたちが恐れをなして去っていくなか、“U‐Who”に潜り続けるチャタトンとコーラーは、その潜水艦の乗組員たちに道義的責任を感じはじめていた。彼らは誰なのか、なぜそこで人知れず生涯を終えなくてはならなかったのか、解明せずに終わるわけにはいかない―。
命を賭して潜入した“U‐Who”最後の危険区域で、二人は歪められた歴史の形を見ることになる。深海に待ち受ける危険に息をのみ、陸上での地道な調査に好奇心を刺激され、ダイバーたちが織りなす人間ドラマに胸が熱くなる、冒険と感動に満ちたノンフィクション。
 
  感想

感想

 527ページもある超ボリューミーな本だった。やっと読み切ったという感じ。

 本書は、レックダイビングに情熱を注ぎ、暗く危険がひそむ海に沈んだ歴史を引き揚げたオトコたちが主役のノンフィクションだ。レック・ダイビングをただ海深く潜るスポーツと思っているならば、それは違う。強靭な肉体と精神が不可欠だ。本書は、レック・ダイビングの危険性についてこう記述している。

呼吸しつづけるディープレック・ダイバーは、おもにふたつの危険に直面する。ひとつは、水深が20メートルより深くなると、判断力と運動能力が低下することだ。その状態は、窒素酔いと呼ばれている。深く潜れば、窒素の作用はいっそう顕著になってくる。絶好の沈没船のいくつかがある水深30メートル以上になると、条件はいちじるしく不利になるにもかかわらず、さまざまな芸当をこなし、生死を分ける判断をくださなければならない。

ふたつめは、もしなにか起きても、単純に海面へ泳いであがってこれないことだ。深い海で一定の時間を過ごしたダイバーは、水圧にからだを慣らすため、あらかじめ決められた時間をおいて、徐々に上昇していかなければならない。空気が足りずに窒息死することがわかっていても、そうしなければならない。パニックにおちいって、"太陽とカモメ"をめざして一目散に浮上するダイバーは、"ベンズ"とも呼ばれる減圧症を発症する危険がある。重症のベンズでは、体に障害が一生残ったり、麻痺したり、死にいたることもある。重症のベンズの苦痛にもだえ苦しみ、悲鳴をあげる患者を目にしたことのあるダイバーは、長時間のディープ・ダイビングのあとで減圧せずに浮上するよりは、いっそ海底で窒息して死ぬほうがましだと口をそろえていう。

ディープレック・ダイビングとは、深さ18メートル以上のダイビングをすること。

 第9章では、このベンズと呼ばれる減圧症を発症した人間の様子が描かれている。ベンズを発症すると意識が混濁し、悲鳴をあげ、身がもだえ、青白い皮膚がどす黒い色に変わり、白目の部分が血に染まってゆく。そんな症状は実際に目にしなくとも胸に苦しさを覚える。

 レック・ダイビングの危険性はそれだけではない。沈没船の中にも危険性は潜んでいる。沈没船内部で道に迷って無くなるダイバーは少なくない。仮にうまくナビゲーションできたとしても、悪い視覚との格闘は避けられない。水深60メートルの海底は暗い。沈没船のなかは、もっと暗く、ときには真っ暗。ほんのわずかな動きで、泥を巻き上げ、水が濁ることも多々ある。だからダイバーは体の動きを最小にして移動しなければならない。

 

 これは読み終えておもったことだが、レック・ダイビングはある種「礼節」のようなものが必要なスポーツであると感じた。なぜなら、沈没船に潜ることは、死者の墓場に踏み入ることを意味するからだ。当然、亡くなった人への礼は欠かせない。また、明文化されてはいないが、ルールも存在する。たとえば、人骨は持ち帰らない。むやみやたらに遺品を物色しないなど。ある種ゴルフに求められる精神である「紳士さ」や「高潔さ」などに似ているかもしれない(レック・ダイビングもゴルフと同じで審判がいないし)。

 そんな「礼」を重んじ、冷静沈着な主人公のひとり「ジョン・チャタトン」。一方で実力は確かだが、感情的で荒々しさを見せ、「礼」に欠けるもうひとりの主人公「リッチー・コーラー」。ふたりは最初対立しあうんだけど、やがて彼らはお互いを尊重し、いつしかパートナーとして信頼しあう仲に。ふたりの絆が深まっていく姿は、こころを熱くさせてくれた。

自分メモ

・本がすきなひとに「今まで読んだ本のなかで、いちばんボリュームのあった本はなんだったかきく」

・本がすきなひとに「ボリュームがあった本を読んでいる途中、飽きたりすることはなかったかきく」

・「この指とまれ」と呼びかけたネイグルが歴史が変わった瞬間に立ち会えなかったことのむなしさ。

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