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【書評】逆転力 ピンチを待て 指原莉乃

逆転力 ~ピンチを待て~ (講談社 Mook)

逆転力 ~ピンチを待て~ (講談社 Mook)

 

~ピンチを待て~。サブタイトルがいい、すごくいい。「ピンチはチャンス」とよく言うし、チャンスを待てもわかる。でも、そうではなく、ピンチを待て。

 2013年のAKB48選抜総選挙で本命と言われていた大島優子さんを押しのけ、1位になった指原莉乃さん。指原さんは自身の人生をこうふりかえっている。

私の人生はピンチからの逆転、の積み重ねだった気がします。ピンチになるからこそ、逆転もできる。 1位になって臨んだ今年の総選挙が大変だったのは、逆転のチャンスがなかったからだと思うんです。私の人生にはピンチが必要なんです。どうやら(2014年の総選挙では2位)。

 考えてみれば、恋愛スキャンダルが流出したアイドルが復活し、頂点に返り咲くなんてことは過去になかった(と思う)。2009年の総選挙で29位、2010年の総選挙で19位、2011年の総選挙で9位、そして2012年の総選挙で4位。順調にアイドルとしての階段を駆け上がってきた指原さんにとつぜん悪夢が襲う。総選挙から1週間後、週刊誌に恋愛スキャンダルが流出したのだ。

 アイドルに恋愛はご法度。もちろんAKBも恋愛は禁止。恋愛スキャンダルが流出した場合、解雇もしくは、研究生に降格という厳しい処分が下されることがほとんど。

 ところが、指原さんは解雇されることもなく、研究生に降格という処分も受けなかった。代わりにHKT48AKB48の姉妹グループで福岡の博多に拠点を置く)に移籍ということになった(プロデューサーの秋元康さんが、ラジオで本人に直接伝えた)。

 週刊誌が発売した日からHKT48への移籍が発表されるまで、指原さんは目の前が真っ暗になり、自分の人生が終わったと思うくらいの心境だったとのこと。しかも、最初はプロデューサーの秋元康さんにAKB48をやめようと思っていると伝えていたのだ。

私としては、AKB48を応援しているたくさんのファンの方に申し訳ないと思ったし、メンバーに迷惑をかけたくなかったからです。秋元さんにも、そう伝えました。すると、

 

「分かった。本気で芸能界にしがみつきたいと思う人しか、残らなくていいから」

 

その言葉を聞いてやっと、ネガティブな方向に進んでいった想像をいったん止めることができました。そして、AKB48を応援しているたくさんのファンの気持ちというよりも、私みたいな人間のファンでいてくれる方々の気持ちになって、自分が今しようとしている選択の意味を考えてみたんです。

  でも、指原さんは思い直し、AKBを辞めたくないと秋元さんに伝えることになる。そして、HKT48に移籍するよう秋元さんから命じられる。そのときの心境はどのようなものだったのか?

一晩寝て起きた、次の日には、すっかり気持ちを切り替えていました。誤解されがちなんですけど、反省しないんじゃなくて、元気になるのがすごく早いんです。ラッキーを見つけるのが得意なんですよ。

 

一生懸命探せば、ラッキーってどこにでも見つかると思う。私もHKT48に移籍することになった時、最初は落ち込みました。でも、AKB48ってサプライズの連続だから、心が鍛えられたんです。どんなにイヤだイヤだと思っても、決まったことは決まったことです。だったら、イヤだって思っている時間がもったいない。ラッキーを探したほうがいい。 

  指原さんが、恋愛スキャンダルが流出しても、総選挙で1位をとることができたのは、この気持ちを切り替えるちからがそうさせたのかなあとおもう。また、指原さんはHKT48に移籍した 後、こころに決めていたことがあった。

この時期の指原グッジョブと思っているのは、ネットを見るのを一切やめたことです。2ちゃんねるはもちろん、まとめサイトなども一切見ていません。記事が出た後にネットを見ていたら「自分は悪いことをした」っていうネガティブな気持ちもあるから、テンションが下がるばっかりだったと思う。 

 

これまで一番、私についてひどいことを書かれているだろうなというのは、簡単に想像できました。でも、見なかったら分からないんですよ。

 

しんどい時は、自分を元気にしてくれたり勇気つけてくれる言葉を探して、ネットを見ちゃうっていう人も多いと思うんですけど、しんどい時ほど、悪意のある言葉が響いちゃうと思う。ネガティブな時にネガティブなものを見ると、ネガティブがふくれあがっちゃうだけなんです。

  ふむふむ、なるほど。「切り替え」と「ネガティブなものに触れない」このふたつがあったからこそ切り抜けることができたわけだ。

 

 そうそう、読んでいて「なるほどなぁ」とおもったのが第八章の"切り替え"と"思い込み"で逆転できるのところ。

 「悔しさをバネにする」って言葉があるじゃないですか。私、悔しさをバネにできないんですよ。悔しかったら、「チッ、最悪だよ」って沈んじゃうタイプなんです。

 

それは昔からわかっていたことで。学校のテストでも、「今回はダメだったから、次は頑張ろう」と思ったことは1回もない。「なんだ、自分はこんなもんなんだ」って落ち込むだけ。

 

自分はそんな人間だとわかっているからこそ。「悔しい」と感じたことは、すぐ忘れなきゃダメなんです。気持ちを切り替えて、「悔しさ」をなかったことにしなきゃいけない。

  芸能界というと厳しい世界のイメージだから、負けん気が強いひとが多くてほとんどのひとがいつも悔しさをバネにしているひとたちなんだろうなぁとおもっていた。でも、かんがえてみたらわかることで、みんながみんな悔しさをバネにできるわけじゃない。指原さんのように、悔しさをバネにできないひとは、その悔しさを忘れて0からスタートすればいいわけで。

 帯に「強い気持ちの作り方」と書いてあるけれど、指原さん自身強い人間じゃないし、感情に左右されやすい人間(だとおもう)。そんな自分のことをわかっているからこそ、「嫌なことは寝て忘れる」という特技が身についたんだろうし。そうやって芸能界を生きてきたんだとおもう。

 たくさんの共感をおぼえた一冊でした。