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【書評】笑う仕事術 菅賢治

笑う仕事術 (ワニブックスPLUS新書)

笑う仕事術 (ワニブックスPLUS新書)

 

 クスッと笑えた一冊でした。 「ガキの使い」や「踊る!さんま御殿!!」「恋のから騒ぎ」などを手がけた日本テレビのプロデューサーでおなじみの菅さん。2014年3月に日本テレビを定年退職し、「ガースーエンターテインメント」という会社を設立し、いまもなおテレビの世界に身をおいています。

 タイトルが「笑う仕事術」なだけあってよんでる途中に何度も笑いました。たとえば、明石家さんまさんにゴールデンの司会のお願いをしにいったときの話とか。

その当時も、しょっちゅうさんま師匠とゴルフに行ったりご飯を食べたりしてて、「とにかくゴールデンはやらないよ、いくら言われても無理だよ」と、口を酸っぱくして言われていました。

 

それでも、さんま師匠と会うたびに、ゴルフ場でもどこでも、「ゴールデンやりたいな。さんまさんとゴールデン」と。口を開けずーっとそれだけを言っていました(笑)

 

「もう、はよティーショット打てや」

「ゴールデンやりたいな、ゴールデン...」

「はよ打て言うてるやろ!」(略)

 

そのうち1996年も終わり、またゴルフに行きました。相変わらず、ボクがティーショットを打とうとする度に、「やりたいな、ゴールデン」とつぶやくパターンが続いていて、「まだ言うとんのかオマエ、年明けても」とあきれられたくらいです。

 

「はよ打てよ」

「でも、ゴールデンやりたいな〜」

「わかったから、はよ打てよ」

「え、わかったってどういうことですか?」

「番組やるから、はよ打てよ言うてるやろ!」

「え?今『やる』って言いましたか?ちょっと待ってください。電話を...」

「いや、それは打ってからかけろや!」

 このゴールデンがのちの「踊る!さんま御殿!!」です。ちなみに、このとき具体的な企画があったわけではなく、さんまさんから出演の了承を得たあと、企画を必死でつくったそうです(笑)

 そのほかにも、「笑ってはいけないシリーズ」が生まれたときの話があったり。

すべては天才・松本人志のひとことから始まった

 

 「ガキの使い」が始まって4年目、平日の深夜枠から日曜日のプライムタイムに移って2年目くらいから、ボクら制作サイドはしょっちゅう「特番やりたい、特番やりたい」と言っていました。そんなある時、松ちゃんがボソッと言ったのが、冒頭の「笑ったら引っぱたかれるってどうですか?」という言葉です。

 

それを聞いて、ボクは「ああ、やっぱりこの人は天才なんだな」って思いました。非常にシンプルでわかりやすいですよね。ボクらはダウンタウンのふたりが引っぱたかれる単純な映像しか思い浮かばなかったのですが、それは「面白い!」と直感しました。

 

でも、今になってよくよく考えると「笑ったら引っぱたかれる」というのは、すごく哲学的というか、深い言葉だなと思います。

 

お笑い番組において、あえてお笑いを禁止にするー「これはどういう謎かけなのか?ボクら試されてるのかな?」と、今なら考え込んだかもしれません。

  笑ってはいけないシリーズは、松本さんのひとことから始まったんですね。ぼくはこういう、企画がどういうところから生まれた的なはなしすきです。こういった裏話がぎっしりとつまっています。ダウンタウンやさんまさんの話がわりと多かったような気がします。

 話はそれだけでなく、テレビについて熱く語ったりも。

バラエティ番組では「くだらない」が最高の褒め言葉

 

 本音を言わせてもらうと「テレビのバラエティなんかを真面目に観んなよ」と、ボクは常々思っています。昔の人たちは「しょせんテレビがやっていることだから」みたいに、いい意味でテレビを見下してくれていました。(略)

 

ボクらがやってきたのはお笑い番組であって情報番組ではないですから、何か生活の役に立とうなんてこれっぽちも思っていませんし、逆に役に立たないからこそ面白いわけで。だから、ボクらは「くだらない」と言われるのは、最高の褒め言葉だと思ってます。 

 番組制作の裏側だけでなく、プロデューサーとしての仕事論であったり、最近のテレビ事情について幅広く書かれたよみやすい本でした。