読書めも

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【書評】ビビリ EXILE HIRO

ビビリ

ビビリ

 

 EXILEのリーダーであり、EXILEの所属事務所(LDH)の社長であるHIROさんの著書。HIROさんといえば、シブくてカッコいいおじさまというイメージ(現在45歳)。そんなイメージとはすこし離れたところにあることばをタイトルにしたのは、なんだか不思議な感じ。でも、このようなタイトルにしたのはHIROさん自身の性格がビビリで心配性だかららしい。そして、そんな性格である自分のことを嫌いではないとHIROさんは言う。

だいたい、自分の性格なんて変えようがないのだ。いや、絶対に変えられないとは言わないけれど、そんなに簡単に性格を変えることはできないだろう。長い時間と、大変な努力が必要なはずだ。

そんなことに労力を注ぐくらいなら、生まれついての自分の性格をなんとかして生かした方が間違いなく効率がいい。

十人十色、人それぞれ、いろんな性格があるけれど、要するに性格なんてモノは、生きるための道具なのだと僕は思う。

そして、道具である以上は、必ず長所と短所がある。 

 これらの文章は冒頭の「はじめに」の箇所から抜粋したもの。この冒頭の箇所が本書のなかでいちばん好きだ。

 臆病な男が無理して勇気を振り絞ったり、バカなやつが利口ぶったり、冷たい人間が優しいふりをしたりするから間違いが起きることがある。どういうわけか人間は、自分の欠点に敏感で、その欠点さえ直せば人生はうまくいくと思い込んでしまう。

だけど、本当にそうだろうか?

勇気さえあれば成功するという保証はないし、利口なら必ず良い人生を送れるというわけでもなければ、優しい男だけがモテる話でもない。無理に性格を変えたからって、人生がうまくいくとは限らないのだ。

臆病なら臆病なりに、バカならバカなりに、自分の性質を十二分に生きた方が、ずっと実り多い人生が送れる。

人生とは、自分という人間をよく知って、使いこなせるか否かの勝負なのだ。ビビリで、バカな僕は、そう思う。

 本書は、HIROさんの自伝ではなく、人生哲学エッセイ。なので、時系列がバラバラ。EXILEのことをよく知らないぼくにとっては、すこしおいてけぼり感が自分のなかにあったまま読んでいた。

 また、本にボリュームがあるので、半分くらい読んだところでお腹いっぱいになってしまった(350ページちかくある)。芸能人のエッセイ本は、その著者のファンじゃないと最後までていねいに読むのはすこししんどいと思う。だから、最後の方は駆け足になってしまった(以前木村拓哉さんの本も読んだときも、途中でお腹いっぱいになった)。

開放区

開放区

 

 EXILEはすでにビッグアーティストとして名を連ねているわけだけど、リーダーのHIROさんを始めとした初期メンバーは多くの試練を乗り越えてきている。HIROさん自身は、ZOOという当時売れていたアーティストのバックダンサーとして活躍していたが、ZOOが解散したことでエンターテインメントの表舞台から一時的に消えることになる。

 そして、HIRO、MATSU、USA、MAKIDAI、SASAで「J Soul Brothers」を結成。しかし、2年後ボーカルのSASAが脱退。代わりに、ATSUSHIとSHUNが加入し、ダブルボーカルがここで初めて生まれる。名前も「EXILE」に変更。ここからEXILEは徐々に売れていくわけだけど (2003年に紅白出場)、5年後の2006年にボーカルのひとりである「SHUN」が脱退。

 絶頂期のアーティストやバンドのなかでメンバーが脱退したら、自分たちのよく知っているメンバーを迎えることが多い。でも、HIROさんはEXILEのボーカルをオーディションという誰もが参加できるカタチにした。しかも応募条件は18歳以上、とだけ。オーディションも日本全国で行われ、その全ての審査をEXILEのメンバーが行った。ちなみに、オーディションの応募総数は約1万人。この激戦を勝ち抜いたのが、EXILEの現ボーカルであるTAKAHIROさんだ。このオーディションを開催するに至った経緯をこう言っている。

夢を持つことの大切さ。

僕らはEXILEとなったその日から、ずっとそのことをテーマとして活動してきた。それなら、そのミリオンアーティストのボーカルを一般公募したらどんなことになるだろう。プロ、アマを問わず、誰でもチャレンジできるオーディションで、EXILEの新しいボーカルを選ぶのだ。

選ばれた人は、一夜にしてミリオンアーティストの一員になる。アツシの隣に立って、何万人という観客を前にして歌をうたえるようになるのだ。

そんな夢のような出来事は、なかなかないはずだ。

  そして、これはあくまでも突拍子もない発想に頼ったのではないと、HIROさんは言う。

なにしろこれは、現代のシンデレラストーリーだ。普通の男の子が、選ばれてある日突然何万人もの観客を詰め込んだドームのステージに立つことになるのだ。

その過程をオープンにしたら、ファンの方たちも自分のことのように、このオーディションを見守ってくれるに違いない。そしてそのオーディションを勝ち抜いた新メンバーを、みんな心から応援してくれるんじゃないか。

それが、夢を持つことの大切さを掲げているEXILEのもっともEXILEらしい手法だとも思った。 

 当時ミリオンアーティストとして活躍していたEXILEからボーカルがひとり脱退したことで、世間からはEXILEは終わったとさんざん言われたらしい。なぜならどんな優れたチームでも、ボーカルが脱退すれば、二度と過去の栄光は取り戻せないからだ。音楽業界の歴史を見れば、それは明らかだった。

 だからこそ、ふつうに自分の知っている仲間に声をかけて、EXILEのボーカルとして迎えるよりも、オーディションというカタチをとったのだ。

とまあ、そんな裏話だけでなく、 HIROさんの奥さんである上戸彩さんについても書かれていたりするので、興味があるひとはぜひ。