私は障害者向けのデリヘル嬢 大森みゆき
内容と感想
風俗、デリバリーヘルス、ソープ、ピンクサロン。世の中には男性の性欲を満たすためのお店がたくさんあります。当然それらのお店には多くの女性が在籍しています。そして、この仕事に従事したことのある女性は、お客さんから必ずこの質問をされたことがあると言われています。
「どうしてこの仕事をやろうと思ったの?」
と。
著者の大森さんも障がい者向けのデリヘル嬢という仕事を始めて、ほとんど全員のお客さんに上記の質問をされたそうです。彼女はこの質問の意図をこのように捉えました。
「自分のような障がい者を相手にすることに抵抗はないのか?」というネガティブな思いから生まれることば。抵抗なんてない、と大盛りさんが相手の心に飛び込んでも、障がい者の彼らの方から、線引きをしてしまうという現実に対して悲しさを覚えたそうです。
そして、たいていのお客さんは最初のあいさつのときに「(面倒かけて)すいません」というようなことを言うとのこと。それくらい繊細なお客さんが多く、たった一言の言葉のニュアンスや、ふとした視線の動きで、こちらの感情の機微を敏感に受け取ることを実感したのです。
本に込められたメッセージ
この本は、大森さんが仕事を通じて出会ったお客様とのストーリーが7割。3割がこの仕事につくまでの経緯となっています。 最初は「障がい者の性を取り上げた本」「性産業に従事する女性の自伝」だと思っていました。
ですが、最終章でこのように書いています。
最後にもう一度だけ、障害者の人たちにいいたい。
「諦めないで。お互いもっと、自分を磨いて。そして恋をしようと」
この本には「障がい者への偏見をなくすこと」「こういう現状を知ってほしい」などなど、様々なメッセージが込められていると思います。でも、その中に「障がい者に対しての恋を啓発するようなこと」もふくまれているんじゃないかなぁと。大森さんがこのようなメッセージを発しているのには理由があります。それは、あるお客さんと出会いこう言われたからです。
「やっぱりねえ。こういう身体だし、諦めちゃうんだよね。ふつうに結婚とかはもちろん、恋愛ももう一生無理かなあって」と。
「障がい者の性」に対する話はなぜかタブーがあります。確かに書籍では「セックスボランティア」が世に出ていますし、男性の射精介護をするホワイトハンズも立ち上がったりなど、認知度は広がってきたのかもしれません。
でも、一般に知られていないことのほうが多いのかなぁと思います。