【#76】まだ17歳だけど、人生って面白いと思う
感想
1998年に乙武さんの「五体不満足」が発売して、大ベストセラーになりました。発行部数500万部を超えるミリオンセラーとなりました。
その約4年後、この「まだ17歳だけど、人生って面白いと思う」が発売されています。2002年に「五体不満足」以外の障がいを持つひとの自叙伝はおそらくないと思います。
そういう意味では、当時貴重な一冊です。著者の岩淵さんは、幼いときに頚椎脱臼になり、車いすユーザーです。彼が生まれてから、17歳までのストーリーです。
平易な文体なので、小学生の読書感想文にいいかもしれません。
読書メモ
1.大人になると、目に見えるものでないと信じることができなくなる
「サンタさんを一度でも疑って、信じなくなったら、もうサンタさんからのプレゼントはもらえなくなるんだよ!」母はそんな事を言った。だが、おもちゃ屋の息子である僕に、このことを信じろというのはなかなか酷な話である。
なぜなら、クリスマス時期になると、世の中の親たちがセッセとうちの店に、子供のプレゼントを買いにくるのを見ていたからだ。
しかし、母の言う通り、疑ったとたんにプレゼントは来なくなってしまった。子どもの時には、目に見えないものでも無条件で信じることができるのに、大人になると、目に見えるもの、形になっているものでないと信じることができなくなる。 でも、目に見えないものほど、大切なものが多いような気がする。
2.相手に求めるのでなく、自分で自分を変える(p104〜)
3人の上級生がぼくのほうを向いて、指をさしながらひそひそ話をしていた。飽きずに話を続ける女の子たちのほうへ踏み出した母がいったい何をしようとしているのか、僕にはわかっていた。
「ここで、お母さんを安心させるか」という気持ちで、母を止め、黙って見ていてほしいと言った。僕は、ひそひそ話をする3人に向かって手を振った。
うわさの対象のぼくから手を振られるなんて思ってもみなかっただろう。驚いた3人は、手を降り続ける僕をしばらく突っ立ったままで見ていた。しまいには、根負けしたのか、3人の腕がわずかに動き、手を振り始めた。
自分の思うように相手が感じてくれないからといって、思ってくれないからといって、無理やり相手に何かを強いることは意味がないと、僕は思っている。無理して変えられて、その人らしさがねじ曲げられてしまうほどこわいことはない、と僕は思う。
その点、自分で自分を変えることは、努力すればできるのだ。だから、僕は相手に求めることはしなかった。
いじめに対して、こういう対処方法があるのかぁ...と思わずうなってしまうエピソード。いじめられたから、やり返す。のではなく、「ぼくに戦意はないよ」と伝えることで相手の戦意をなくすというやり方。
分かっててもなかなか難しいことだと思います。
3.お母さんと楽しいときは、だいきの楽しいとき(p162〜)
ほかのお母さんは、もっと自由なはずだ。好きなときに、好きなことをする。それなのにうちの母ときたら、家事や店の仕事が終われば、僕の世話ばかりの毎日だった。(早くぼくから解放してあげたい。楽しんでほしい)
僕の思いを見透かしたかのように、母は言った。「お母さんの楽しいときはね、だいきの楽しいときなの!」
この本のなかの一番好きなエピソードです。子の想いをすくって、自分の想いを伝える。すごく素敵なシーンです。