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読書めも

読んだ本の感想をぼちぼち書いてます

ぼくは62歳の新米社長《社会を変える仕事をしよう ビッグイシュー 10年続けてわかった大事なこと 佐野章二》

 

◎本書の内容と感想

この本のよかった点は、代表の佐野章ニさん以外のビッグイシューのメンバーやビッグイシューを支えるボランティアの人達のインタビューが掲載されていた点。佐野さん自身の想いや考えだけでなく、ビッグイシューに関わる人達の想いや考えが分かるので、多様な視点からビッグイシューの魅力を知る事ができます。

ただ、一点残念だったのが、ビッグイシューに関わるホームレスの人達のインタビューがなかった事。ビッグイシューの最大の魅力は、「ホームレスの人をビジネスパートナーにしている所」です。そのホームレスの人のインタビューがなかったのは、ただただ残念な気持ちでいっぱいです

世の中には、「不条理」があるんだと感じさせられる一作です。著者は、雑誌販売をホームレスに提供し、自立を応援する事をミッションに掲げ、有限会社ビッグイシューを立ち上げます。この方針に対して、反発する声があがります。「仕事だけでなく、生活全般の面倒を見てほしい」、「もっと販売者をサポートしろ」など。

佐野さんは、社会に必要な事をしているのに、世の中は、反発する。「どうして世の中の人は、佐野さんの取り組んでいる事を応援しないのだろう?」と思いました。これこそ、まさに不条理の世の中だなあと感じる瞬間です。

また、ビッグイシューを立ち上げた時、代表の佐野さんは、62歳なんですよね。マクドナルドを世界に広めたレイ・クロックは、52歳の時にマクドナルドのフランチャイズビジネスを始め、ケンタッキーのカーネル・サンダースは、40歳でケンタッキーの前姿となる、「サンダースカフェ」を作り、62歳で、フランチャイズビジネスを始めます。佐野さんが僕たちに教えてくれた事は、何歳からでも事業を起こす事はできるという事なんじゃないかなと思います

 

◎読書メモ

1.サポートはするが、ケアはしない

ビッグイシューは、よく読者や世間の人から「いい事をしていますね」と言われます。そんな時、私は「いい事ではなく、社会に必要な事をやっているだけです。むしろ、社会の協力を得て、社会からやらせて貰っています。」と強く言う事にしている。

いい事をしていると思うと、相手の事を考えずに、自己満足でついやりすぎる。傲慢にもなりやすい。上から目線でやってあげる事にもなる。

販売者の「セルフヘルプ」をサポートはするが、ケアはしない。われわれは、「自立していくための場やチャンスを提供」する。

有効なビジネスモデルをつくって取り組み、全面解決はできなくても、問題解決の一翼を担う会社。問題を抱える人とともにあって、彼らを応援する組織なのである。
 
2.われわれは、女神さまに選ばれてしまった
「100%失敗する」と言われるくらいリスクが高い起業だったので「失敗した時どうする?」「恐怖心はなかったのか?」と問われる事が多い。

(略)

ビッグイシュー」の内容であれ、路上販売に関わる準備であれ、かたちになるまで、たえず自分で自分を鼓舞する必要があった。しかし、どうしても弱気になる事があった。

本当につらいときは、「正直、これは自分以外の人、もっとお金持ちで余力のある人がやってくれてもいいんじゃないか?」という思いが頭をかすめる。

「とくに、ホームレス問題は、誰がやっても、おかしくない社会に必要な事業。なのに、なぜ私なんだ?」と

そんな時には、こじつけで「なぜ自分がこのような仕事をしているのか?もし、いまの日本の社会やその問題を見守っている女神がいるとしたらわれわれは、その女神に選ばれてしまったからだ」と無理やりにでも考える事にした。そう思って自分を奮い立たせた。


ぼくが一番好きな所です。自分のやっている事が辛くなった時、投げ出したくなった時にこうやって考える佐野さんの器の大きさを垣間見る事ができます。運命ということばを使うのではなく、「女神に選ばれる」ということばを使用するところがよかったです。

 

3.ビッグイシューは、ホームレスに雑誌販売の仕事を提供し、自立を応援することをミッションにしている

ホームレス支援に関しては、さまざまな考えがある。有限会社ビッグイシューの場合は「ホームレスに雑誌販売の仕事を提供し、自立を応援する」

NPOビッグイシュー基金は、「ホームレスの人のセルフヘルプのサポートをする」という事がミッションだ。

ある意味では淡々としていてクールに見えるかもしれない。中には、この方針に反発するホームレスの人もいる。たとえば、「ビッグイシュー日本として、独自に寝られる場所を提供すべきだ」という意見である。「路上で寝ている人達は、かわいそうだ。そこに痛みは感じないのか?あなたたちには、路上生活者達の視点がない」と設立当初からわれわれは責め続けられた。

しかし、私はきっぱりと反論し、「それはやらない」と言ってきた。すでに社会にはホームレスの人に住居を提供するいくつかのプログラムや団体があるからだ。アパートの斡旋などはそうした人達との連携やネットワークでやるのが筋と考えてきた。

仮に、アパート一楝を借り切ってホームレスの人に住んでもらうと、多額の資金とそれだけで多くの仕事が発生してしまう。10人も住めば、1人や2人の専従のスタッフが必要となる。


冒頭の感想でも書いたと思いますが、ここの箇所が、「世の中って不条理だなあ」と感じました。社会に必要だと思うからこそ、ビッグイシューを立ち上げ、ホームレスの人達に雑誌販売の仕事を提供してきたのに、その上、寝場所も提供しろよ!とホームレスの人達から言われるわけです。。。

でも、そこで、はっきりとビッグイシューの進むべき道を示す佐野さんは、さすがです。ビッグイシューのミッションは、「雑誌販売の仕事をホームレスの人達に提供すること」なわけですから。だからこそ、ホームレスの人達の寝場所を提供するという事業に手を出さなかったわけです

 

4.アマとプロの間に「1万時間ルール」がある

アマとプロの間には、「1万時間ルール」というのがあるそうだ。つまり、1万時間の作業を積み重ねればプロになれるということだそうだ。1万時間というのは、1日10時間の作業をするとして1000日間。

約3年に相当する。まさに石の上に3年という事かもしれません。


社会人になったら、その会社でまず3年は働くと言われるのが一般的だと思います。僕は、常々疑問がありました。なんで3年間は、そこの会社で我慢してでも働かなければならないのか?と。でも、この佐野さんのことばで少し分かったような気がします。3年働く事で、プロに近づけるのだと。プロになる事で、別のステージに上がれるからこそ、転職をする目安なのかもしれません

 

5.税金にお世話になる人から、税金を払える人へ

2012年度の生活保護受給者は、210万人を超え、生活保護費として3,7兆円以上が支払われているという。私はホームレスをはじめとした社会的弱者が、「税金のお世話になる人」から「税金を払える人」になってほしいと考えている。

ホームレスの人を放置して、その人が路上で行き倒れになってしまったとする。その場合、経費はざっと1ヶ月に50万円はかかると言われる。当然本人に払えるわけもなく、病院は生活保護の受給を申請し、最終的には請求は国に行く事になり、税金からそのコストが負担される。

「ホームレスは、怠け者で路上で倒れても自己責任。のたれ死にすればいい」とそう悪しざまに言う人がいる。しかし、経営者が集う会に講演で呼ばれたりすると、私は「みなさんは自力で成功された方なので、"自己責任"を強調されるかもしれませんが、みなさんが払った税金がそうした濃厚治療に使われている自己責任論で路上に放置するのは、かえって一番コストがかかる方策なんですよ。」と言うと、とても驚かれる。


税金のお世話になる人から税金を払える人へ。これは、ビッグイシューが掲げるビジョンだと思います。ビッグイシューのミッションは、くどいようですが、「雑誌販売の仕事をホームレスの人に提供し、自立をして貰う事」これを達成した時のビジョンがまさに、ホームレスの人が税金のお世話になる人から、払える人になるという事なんでしょう

後半のセンテンスは、個人的に驚きを隠せませんでした。ホームレス問題を放置する事が、結果的に税金をたくさん支払うという事です。つまり、社会問題を解決する事は、税金を有効に使う事でもあり、税率を下げる事ができる方法の一つでもあるわけです。

まさに、ソーシャルビジネスがなぜ必要なのか?という事が分かりますよね。

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