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【#72】被害者のこころ加害者のこころ-子どもをめぐる30のストーリー- 藤原正範

被害者のこころ加害者のこころ―子どもをめぐる30のストーリー―

被害者のこころ加害者のこころ―子どもをめぐる30のストーリー―

 

 ●本書の内容

ときに、人は道を踏み外すことがある。相手に迷惑をかけたときには、謝罪が必要なケースもある。謝罪だけでなく、少年院や刑務所に行くことだってあるかもしれない。

本書は、事件を起こした加害者の心境と被害者の心境が書かれている。第一章では、被害者の気持ちについて。第二章では、加害者の気持ちについて。そして、第三章では被害を受けて、加害者となったひとの気持ちについて書かれている。 

被害者・加害者の観点だけでなく、両親や先生からの視点も書かれており、非常に興味深い内容となっている。

法律を学ぶひと、教員を志すひとに読んでほしい一冊。

●感想

30のストーリーがあるのだが、ひとつひとつの話の終わり方がすべて後味がよくない。たとえば、加害者側が自分の過ちの深刻さに気づいていなくて、「なんでおれが謝罪しなきゃいけないの?」という終わり方であったり、被害者が泣き寝入りするまま終わったりなど。

貴子は、うつむいたまま「ごめんね」と小さな声で言った。隣のお母さんはハンカチで目を覆って泣き続けた。しかし、朱美は、貴子の目は謝っている目ではなく、むしろ朱美を責めているように感じた。

以前のような仲良しに戻ることはありえない。このことだけははっきりしていた。

「どうして私の家の物を盗んで帰ったの?」

この理由を、朱美は知りたかった。しかし、貴子はそれを聞いてみたいとは思わなかった。 

これは、高校生の朱美がクラスメイトで仲がよかった貴子に、色々な物を盗まれる話である。このように、盗難のケースだけでなく、ひったくりやシンナー、暴行・傷害、強姦未遂などのケースも出てきます。

だいたい、1時間もあれば読めるので、ご興味がある方はぜひ。