読書めも

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【#71】大卒だって無職になる"はたらく"につまずく若者たち 工藤啓

大卒だって無職になる

大卒だって無職になる "はたらく"につまずく若者たち

 

 

2013年度の「子ども・若者白書」によると、ニートの数が63万人を超えたそうです。年齢別にみると、15~19歳が9万人、20~24歳が17万人、25~29歳が18万人、30~34歳が18万人。

最近では、ニートと呼ばずにレイブルという名称も考案されました。

レイブルについてNPO法人トイボックス、およびスマイルスタイルがつけたそうです)

ニートということばと一緒によく出てくることばがあります。それは、「ひきこもり」ですね。そのひきこもりやニートの支援を行っているのが、本書の著者であるNPO法人育て上げネット理事長の工藤啓さん。

 

■感想

読み終えて思ったのは、フローレンスの駒崎さんの本にすこし似ているなーということ。駒崎さんの「社会を変えるを仕事にする」は本当に赤裸裸に自分のことを書かれていたわけだけど、あれをすこし抑えめにした感じかなぁ。

 

「社会を変える」を仕事にする: 社会起業家という生き方 (ちくま文庫)

「社会を変える」を仕事にする: 社会起業家という生き方 (ちくま文庫)

 

 

 たとえば、第6章の冒頭で、

最近、出張続きの僕は、ほとんど事務所に出勤していなかった。今日は、久しぶりに事務所に顔を出している。相変わらず、ウチのスタッフはとっても忙しそうだ。僕も、一緒になって忙しいふりをしつつ、この間回答をもらったメールの詳細をじっくり見ることにした。 

 とか。忙しいふりをしつつってなんだよっていうw

経営者の本を読んでいると、いつも思うのだが、なんだか「教えを乞う」ような状態になることが多い。そして、読み終えると「うーん、勉強になった!」とか「じぶんの為になった!」といつも思う。

でも、本書ではそういったことを一切感じさせない。もちろんひきこもりの話や育て上げネットの話は勉強になる。

そういったことよりも、「なるほどなぁ」と共感したり、「大変だよなぁ」と思うことのが多かったような気がする。

 

■読書メモ

◎新卒カードの大切さ

ひょっとしたらR子さんは、「求人→応募→採用試験・面接」という一連の流れに対して、拒否反応があるのかもしれない。この流れとは違う「就職」を目指してみてはどうだろう。そう考えたスタッフは、ある会社のインターンシップをR子さんにすすめた。(略)そして、R子さんは正式にその職場に採用された。

 

これは、育て上げネットで工藤さんが出会ったおとなしく真面目が取り柄の女の子のエピソードを抜粋したものです。

これを読むと、ぼくも多くの学生が就活というと上記のプロセスを就活だと思っているケースが多々あるなぁと感じます。

というか、ぼくもそう思っていましたし。きっと、このステップを踏むことだけが就活じゃないことを知るということがきっと大切なんじゃないかと。

でも、工藤さんはこう言いました。

 

就職する方法はたくさんあるよ。R子さんのように、インターンから採用されることもめずらしくない。でも一方で、どうしようもなく新卒一括採用があるのは事実なんだよね。これは新卒の人にしか使えない道具とも言えるものだ。

だから、新卒時の就活は、ほかの人に比べてチャンスが一つ多いとも考えられるんだよ。新卒時に就活するのと、卒業後に就職経験のないまま就職活動をするのとは、まったく違うんだ。就職経験のない人が就職するのはものすごく大変だよ

 

うーん、なるほど。「求人→応募→採用試験・面接」が苦手だからと言って、逃げるのではなく、新卒カードという一回しか使えないカードを切ってみる。ただ、それがダメだったからと言って、就職できないわけじゃない。

 

◎つまずくことはおっけー。でも大きくつまずかないように。

Aの言う「できるだけつまずかないようにするにはどうしたらいいのか?という問いに対して、僕はむしろ「つまずくことはあってもいい」と答えよう。

「つまずくこと」はフツウのことだ。ただ大切なことがある。 

・大きく転んでしまわないようにすること

・転んでしまっても大きなけがをしないよう、しっかり受け身を取れるようにすること

・すぐに起き上がって、また歩き始めるようにすること

 そんなことのほうが、重要だと思うのだ。

 

大きな失敗をひとつするよりも、小さな失敗を重ねること。そして、そのたびに改善策を考える。単純に考えれば、そうですよね。

大きなケガをすると、治るのに時間がかかるわけで、それよりも小さなケガを重ねることでより強靭な体になるのかもしれないわけで。

 

◎知らないだけ

日本の未来のために汗をかく政治家の友人がいると、「政治家は....」とひとまとめにして批判したりしません。昼夜を問わず社会をよくしようと奔走する官僚に知人がいると「官僚ってさー」とひとくくりにすることはありません。夢に向かって努力する仲間を前に「いい年して夢とか言っちゃって」と鼻で笑うようなことはしなくなります。親類に自宅から出られない若者がいたら、「ひきこもっているのはやる気がないからだ」と安易に決めつけることは絶対にありません。

そう、ボクらは身近に感じられない存在に対して、よく知らないこそ厳しい言葉を突きつけたり、根拠のない決めつけをしてしまったり、無下に不平や不満をぶつけてしまったりします。でもそれは、その人がたまたま知る、知り合う機会に恵まれなかっただけなんだと思います。

 

◎半径3メートルから5メートルの範囲にある世界

社会課題は何も、若者の「はたらく」や「自立」だけではありません。すでに見えている課題もあれば、見えづらいけれども目の前に間違いなく存在している課題もあります。

そして何より、目の前に横たわっている社会課題に対して、私たちはそれを自分ごととして捉えることをためらい、ときには気がつかなかったふりをしてやり過ごしてしまいがちです。そんな社会課題を前にしたら、誰でも足がすくみ、無力感にさいなまれます。では、どうしたらいいのでしょうか?

今一度、ボクらは自分の目の届く「半径三メートルから五メートルの範囲にもある世界」を大切にしていくことが重要なんだと思います。

それは路上に落ちているゴミを拾って、ゴミ箱に捨てることかもしれません。高齢者や妊婦さんに、笑顔で席を譲ることかもしれません。通学途中の小学生に大きな声で「おはよう!」って声をかけることかもしれません。

もちろん、ゴミを拾おうとした瞬間に「ゴミを捨てるな!」と怒られたり、席を譲ろうとして断られたり、小学生から挨拶の返事がなかったりと、残念な結果になることもあります。

でも別にいいじゃないですか。苦笑すればすむことです。

 

これは、「おわりに」に書かれいた文章です。社会起業家ってどんな職業なんだろう?と言ったときに、こういうことなんだろうなぁと工藤さんが教えてくれた気がしました。

社会の課題を解決するなかで、笑われたり、へこむこともあるけど、それが社会の課題を解決することができるなら、いいじゃん!と。

苦笑してたらいいさ、と言う工藤さんが目に浮かびました。