読書めも

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【書評】お母さん社長が行く 橋本真由美

お母さん社長が行く! (NB Online book)

お母さん社長が行く! (NB Online book)

 

◎内容と感想

ブックオフの2代目社長を務め、現会長の橋本真由美さんの書籍。

フランチャイズを展開する店でバイトから社長に成り上がったのは、モスバーガーの現社長の櫻田厚さん、吉野家の現社長の河村泰貴さん。

そして、今回ご紹介する書籍の主人公、橋本真由美さんの3人だけである。

しかも、橋本さんは、41歳の時給600円からスタートし、一般のおばちゃんとなんの変わりない遍歴を歩んで来た人物です。

MBAを取得した!大手企業に勤めていた!一流大学卒業した!というわけではありません。でも、17年勤め、社長の座まで上り詰めました。

その中で橋本さんがバイトのモチベーションをあげる方法を紹介しているのですが、それが非常に心に残った表現だったのでご紹介いたします。

 

私は、一号店のオープニングスタッフとして働いた後、二号店の店長を勤めます。ところがそこでは、人のマネジメントに苦労しました。自分が帰ると、スタッフはタバコを吸いにいったり、パチンコ行ったり、仕事をサボる連中ばかりで、やる気のかけらもない人物ばかりでした。

ところが、二号店が経営危機の状態になります。社長から私にこう伝えられました。『橋本さん...もう無理だよ...』と。私は、一目もはばからず号泣してしまいました。それを見たスタッフは、あの橋本さんが泣いてる...なんとかしなくちゃ!と思い奮起しました。

そして、見事ニ号店の経営危機を乗り越えたのです。じゃあなぜ彼らは奮起することができたのでしょうか?それは、彼らにバイトをすることで『バイト代を貰えること』以外に仕事をやるための『動機』が欠けていたからです。仕事の喜び、成功体験を味わったことがないからです。何を励みに頑張ればいいか分からない。

だから「バイト代貰えれば、仕事自体どうでもいいや」って思ってしまうのです。ところが、私が泣いたことで「あの橋本さんが泣いてるからちょっと頑張るか」という彼らにとって一つのバイト代以上の立派な動機ができたのです。

 

たぶんここで橋本さんが言ってる動機って目的や目標という言葉を言い換えたのではないでしょうか?

でもよく目標は?とか目的は?とか言われるけど、僕にとってはあまりしっくりきませんでした。よく中高で勉強する時に、目標を書かされたりしませんでした?子供に目標設定させるのって難しいと思います

そうじゃなくて大人が子供に動機付けを自然とさせた方がよっぽど効果的だと思います

勉強でもそうです。勉強をやることは大事です。そんなことは多くの人が分かっています。

でもその勉強を取り組む時にきっかけがないとなかなか継続し続けることができません。だから勉強でもその子にどう動機付けさせることができるか?が大事になってきます。それが学校で言うならば先生や親の役割であり、仕事ならば、上司がその役割を担わなければなりません。とまあブックオフユーザーであるならばおもしろい内容となっています。

 

◎読書メモ

1.目利きではなく、分かりやすい基準設定

ブックオフ開店当初は非常に苦労しました。何に苦労したかと言うと、本の買い取りの仕組み作りです。神保町や神田の古本では、買い取る時に『目利き』商売です。

長年の経験から本の価値を見抜き、それに値段をつけていくというやり方。ブックオフはこういった目利き商売を目指しているわけではなく誰もが気軽に古本を売り、誰もが気軽に古本を買える、そんな大衆的なビジネスを目指していました。

逆に言えば、古本の価値を見抜き、その本を高く売るということはできません。しかも、多くのお客さんが来て、店長に「これいくらですか?」とやっていたら時間がいくらあっても足りません。そこで明確な基準を作りました。

①見た目の綺麗さ②最近発行されたものであること。見た目の綺麗さもAからDに分けるこうすることで、既存の古本業界とは違った買い付けの値段設定の仕方を取り入れたのです。

 

2.語り部の存在

ブックオフでは、社内報を「語り部の記録」と言います。誰と誰が結婚した、誰のところに赤ちゃんができたなどと言った情報は載せません。名前の通り、創業者の坂本や私など、店長経験者や長年勤めている人による自分の体験を包み隠さず話す体験談です。

ブックオフに勤める社員の成功談も失敗談も話します。ブックオフには、長年積み上げてきたノウハウがありマニュアルもあります。もちろん、マニュアルはブックオフの教科書であり、非常に大事なものです。

ですが、マニュアルは盗まれる可能性があります。でもマニュアルを盗んだだけではブックオフと同じ会社を作れるかというとそうではありません。そこには魂がないからです。マニュアルの行間に込められた魂を感じ取れない限りブックオフの運営は真似っこできません。

 

3.若い社員に擬似体験をさせる

ブックオフでは語り部の存在を非常に大事にしています。もちろん私たちや創業者の坂本の苦労話や成功体験を聴く事で、それを聴いた人が実際に体験できるわけではありません。

でも、会社の苦労や私たちが体験したこと会社がよちよち歩きだった頃会社が倒産しそうだった時みんなで工夫したことなどを直接体験した人から聴く事で、聴いた人は擬似体験することができるのです擬似体験をすることで人は変われると思うのです。

ブックオフの人材育成のキモは語り部の存在。私たちの体験・経験を語り継ぐことで若いスタッフに擬似体験をさせます。そうして、また彼らは現場で新しい経験を、成功や失敗を経てそれをまた新しい世代にこうしてブックオフの人材は作られていくのです。

 

4.あなたはその人に真剣に向かい合ってますか?

ある時、ある店舗の店長を怒鳴りつけました。彼は、そこから這い上がり、なんとかその店舗の経営を立て直しました。その後、彼からメールが届いて気づいたことがあります。私は、彼を怒鳴りつけ、もう見捨てようとしていた。

でも、私は彼に対して真剣に向き合っていただろうか?私が心底真剣じゃなかったから彼に危機意識が芽生えなかったのではないだろうか?高い場所から、人に権力で押し付けても人は動きません。自分の全人格をかけてぶつかった時に人は動いてくれるのです。